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人事労務コラム Column

2020.08.01

特集

テレワークにかかる労務管理上の留意点

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて2020年4月に政府から緊急事態宣言が発令されたのを機に、多くの企業でテレワークの導入が進みました。

内閣府が同年6月21日に公表した調査結果によると、この間、全国でテレワークを経験した就業者数は全体の3分の1以上にのぼり、東京では5割を超えたことが明らかになりました。6月以降のコロナの鎮静化に伴って、在宅勤務から出社に切り替える企業がある一方で、今回のことを機に、原則、テレワークに切り替える企業も出てきています。コロナ禍の状況下において、テレワークの導入と適正な運用は企業経営の鍵を握るものと思われます。

そこで今回は、テレワークにかかる労務管理上の留意点について解説します。

1.労働時間の適正な把握・管理

使用者は、労働者が在宅勤務を行う場合、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として適切に労働時間を管理し、確認することが求められます。やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合においても、適正な把握のための措置を実施しなければならないこととされています。

2.事業場外労働みなし労働時間制の活用

また、在宅勤務の場合、就業場所が自宅で労働時間の算定が難しいため、次の2つの要件を満たす場合には、事業場外みなし労働時間制を適用することができることとされています。

まず1つ目は、パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態になっていないことです。たとえば、労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが使用者から認められていない場合や、使用者からのメール等による具体的な指示があった場合に労働者が即応しなければならない状態に置かれている場合は、通信可能な状態であるとして、事業場外みなし労働時間制を利用できません。

2つ目は、作業が随時使用者の具体的な指示に基づいていないことです。ただし、業務の目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、基本的事項について変更を指示することは「具体的な指示」には当たらないこととされています。

3.長時間労働対策

在宅勤務は、労働者が使用者と離れた場所で勤務するものであるため、長時間労働を招くおそれがあります。このため、使用者は、長時間労働による健康障害の防止を図ることが求められています。長時間労働を防ぐ方法としては、所定労働時間外におけるメール送付の抑制や深夜・休日のシステムへのアクセス制限、時間外・休日・深夜労働の原則禁止、さらには長時間労働を行う労働者への注意喚起を行うことなどが有効とされています。

4.在宅勤務者の安全配慮および健康管理

使用者は、通常の労働者と同様、在宅勤務者に対しても安全配慮義務を負っています。このため、在宅勤務者についても労働時間を把握し、業務量を調整するなどして長時間労働とならないようにすることが求められます。また、健康管理の面では、定期健康診断やストレスチェックなども実施しなければなりません。

とくに、在宅勤務のみで働くような場合、日常的に顔を合わせる機会がほとんどなく、メールなどのやり取りだけになりがちなため、業務の進捗確認や健康状態の把握を兼ねて、定期的に面談の場を設けてコミュニケーションを図ることが大切です。

5.労働災害の補償に関する留意点

在宅勤務者についても労災が適用されるため、業務が原因でけがをした場合、そのけがに業務遂行性と業務起因性が認められる場合には、業務災害として労災給付の対象となります。在宅勤務は、就業場所が自宅というプライベートな空間であり、業務上の災害と私的行為による災害を明確に区分することが簡単ではないため、万が一の災害に備えて、災害状況の把握や事実確認を確実に行うためのルールを取り決めておくことが重要です。

6.通信費、情報通信機器等に要する費用負担の取扱い

これまでのテレワークは、労働者の希望に基づいて行われるのが一般的であったため、テレワークに要する通信費や情報通信機器等の費用負担についてはあまり問題となりませんでしたが、コロナ禍で会社の指示に基づいて行われる場合、会社が費用負担するか否かや、費用負担の限度額、請求方法等について、あらかじめ検討したうえで就業規則等に定めておくことが望まれます。

とくに、夏や冬の冷暖房にかかる電気代や電話代等は、金額が大きくなるケースがあり、労働者の不満のタネになる可能性もありますので、十分に検討しておくことが肝要です。

7.おわりに

以上、テレワークにかかる労務管理上の留意点について見てきました。このほか、人事管理上の問題として、評価をどのようにしていくべきかや、成果で処遇する「ジョブ型」雇用への転換を図るべきかなど新たな課題が浮き彫りになりました。今後、これらの対応についても、議論が深められていくものと思われます。

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

※本コラムは、「日経トップリーダー」経営者クラブ『トップの情報CD』(2020年8月号、日経BP発行)での出講内容を一部編集したものです。

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