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人事労務コラム Column

2025.01.01

法改正情報

【2025年(令和7年)4月改正】改正次世代法の概要(前編) ~ 改正の概要とくるみん認定の認定基準見直しのポイント ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

育児・介護休業法および次世代育成支援対策推進法にかかる改正法(※)が2024年5月31日に公布され、10月31日に改正後の次世代育成支援対策推進法施行規則(以下「省令」)の公布および行動計画策定指針(以下「指針」)の告示がなされました。次世代法の改正事項にかかる具体的な内容は省令や指針に詳細が定められているため、これらについても把握しておく必要があります。

そこで、今回はこの省令の改正内容について、次回は指針の改正内容について、それぞれ詳しく見ていきます。

※正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」。

▽次回コラム
【2025年(令和7年)4月改正】改正次世代法の概要(後編)~ 改正指針から見る状況把握と数値目標設定のポイント ~

 

1.改正次世代法の概要

次世代法では、常時雇用する従業員が101人以上(100人以下は努力義務)の事業主に対し、一般事業主行動計画(以下「行動計画」という。)の策定が義務づけられていますが、今回は、以下の3点が改正されます。なお、施行日は(1)を除き、2025年4月1日です。

(1)次世代法の有効期限の延長

次世代法は時限立法であり、現行法の有効期限は2025年3月31日ですが、今回の改正により10年間延長となり、2035年3月31日までとされました。なお、この改正事項は公布日と同日に施行されました。

(2)計画策定時の育児休業取得状況や労働時間の状況の把握義務

改正法の施行後は、行動計画を策定する際に、自社の育児休業等の取得の状況および労働時間の状況を把握するとともに、改善すべき事情について適切な方法により分析した上で、その結果を勘案して行動計画を定めなければならないこととされます。

(3)数値目標設定の義務づけ

行動計画には、①計画期間、②目標、③目標達成のための内容と実施時期の3つを定める必要がありますが、②の目標について、数値を用いた定量的な目標を設定しなければならないこととされます。

これらの改正事項と施行時期をまとめると、以下のとおりです。

【次世代法の概要と施行時期】

改正内容 施行時期
次世代法の有効期限の延長(2025年3月31日→ 2035年3月31日) 2024年5月31日
計画策定時の育児休業取得状況や労働時間の状況の把握義務 2025年4月1日
計画における数値目標設定義務 2025年4月1日

 

2.省令の概要

今回の改正にかかる省令は、改正法と同様、2025年4月1日に施行されます。ここでは、省令の内容について見ていきましょう。

【1】一般事業主行動計画の策定時の仕組みの見直し

まずは、一般事業主行動計画(以下「行動計画」という。)の策定について、見直された内容を見ていきます。

(1)行動計画策定時に状況把握が義務づけられる事項

1.(2)で見たとおり、改正後は行動計画策定時に状況把握が義務づけられますが、省令では、把握する事項について、直近の事業年度における以下の①および②の事項とされています(改正則1条の2第1項)。

【把握が義務づけられる事項】

男性労働者の「育児休業等(※1)取得率」または男性労働者の「育児休業等および育児目的休暇(※2)の取得率」の状況
フルタイム労働者一人当たりの各月ごとの時間外労働および休日労働の合計時間数等の労働時間(※3)の状況
※1 育児・介護休業法に定める育児休業・出生時育児休業のほか、同法で定める3歳未満の子を育てる労働者を対象とした育児休業に関する制度に準ずる措置(同法23条2項)、小学校就学前の子を育てる労働者を対象とした育児休業に関する制度(同法24条1項)を含む。
※2 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度(育児休業等および子の看護休暇を除く)をいう。
※3 高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者にあっては、健康管理時間を指す。

 

(2)数値目標の設定

1.(3)で見たとおり、行動計画を策定するときは、数値目標を設定することが義務づけられますが、省令では、この数値目標の設定にあたって、把握と分析を行った(1)の①および②にかかる数値を用いて定めなければならないこととされています(改正則1条の3)。

【2】認定制度における認定基準の見直し

改正法に伴う改正事項ではありませんが、今回の省令の改正では、くるみん等の認定制度の認定基準も見直されました。ここからは、認定制度における認定基準の見直しについて見ていきます。

(1)男性労働者の育児休業等取得率等の引上げ

次世代法の各認定制度における認定基準のうち、男性労働者の育児休業等取得率等が以下のとおり引き上げられます(改正則4条1項1号ホ、3号ロ、5条の3第1項1号ロ)。

【男性労働者の育児休業等取得率】

認定制度 現行  2025年4月1日以降  

トライくるみん

7%以上

10%以上

くるみん

10%以上

30%以上

プラチナくるみん

30%以上

50%以上

 

【男性労働者の育児休業等および育児目的休暇の取得率】

認定制度 現行  2025年4月1日以降  

トライくるみん

15%以上

20%以上

くるみん

20%以上

50%以上

プラチナくるみん

50%以上

70%以上

 

(2)女性の有期雇用労働者における育児休業等取得率の要件の追加

現行の各認定制度の基準において、女性労働者全体の育児休業等取得率を75%以上としているところ、改正後は女性の有期雇用労働者の取得率もあわせて75%以上とする要件が追加されます(改正則4条1項ヘ、3号イ、5条の3第1項1号イ)。

【女性の育児休業等取得率】

認定制度 現行  2025年4月1日以降  
トライくるみん 〇女性労働者全体の取得率75%以上 ①女性労働者全体の取得率75%以上

かつ

②女性の有期雇用労働者の取得率75%以上

くるみん
プラチナくるみん

 

(3)フルタイム労働者の法定時間外・法定休日労働時間要件の見直し

現行の各認定制度の基準において、「フルタイム労働者の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満であること」としているところ、くるみんおよびプラチナくるみんにおけるフルタイム労働者の同基準が以下のとおり変更されることとなりました(改正則4条1項ト、3号ハ、5条の3第1項1号イ)。

【法定時間外・法定休日労働時間要件の見直し】

認定制度 現行  2025年4月1日以降  
トライくるみん 〇法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満

変更なし

くるみん

①法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月30時間未満

または

②25~39歳の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満

プラチナくるみん

 

(4)成果に関する具体的な目標を定めて講じる項目の変更

各認定制度の基準における、成果に関する具体的な目標を定めて講じる項目について、現行の「所定外労働の削減のための措置」が削除され、新たに「男性の育児休業取得期間の延伸のための措置」が追加されます(改正則4条1項ト、3号イ、5条の3第1項1号ハ)。

【成果に関する具体的な目標を定めて講じる項目の変更】

認定制度 現行  2025年4月1日以降
トライくるみん ①所定外労働の削減のための措置
②年次有給休暇の取得促進のための措置
③短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件整備のための措置

①男性の育児休業取得期間の延伸のための措置

②変更なし
③変更なし

くるみん
プラチナくるみん
トライくるみん・くるみんは、改正後の項目について「①~③のいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施していること」、プラチナくるみんは「①~③の全ての措置を実施しており、かつ、①または②のいずれかについて定量的な目標を定めて実施し、その目標を達成したこと」が必要

 

(5)プラチナくるみんの計画要件の見直し

プラチナくるみんにおける能力向上またはキャリア形成の支援のための取組みにかかる計画の要件について、以下のとおり見直されることとなりました。この見直しにより、「女性」に限定されていた取組みの対象が「男性」にも拡大されるとともに、より家庭と仕事の両立を意識した内容に変更されます(改正則5条の3第1項1号ホ)。

【プラチナくるみんの計画要件の見直し】

現行 2025年4月1日以降
育児休業等をし、または育児を行う女性労働者が就業を継続し、活躍できるような能力の向上またはキャリア形成の支援のための取組みにかかる計画を策定し、実施していること 育児休業等をし、または育児を行う

労働者が職業生活と家庭生活との両立を図りながら意欲を高め、能力を発揮して

活躍できるような能力の向上またはキャリア形成の支援のための取組みにかかる計画を策定し、実施していること

 

(6)3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者にかかる要件の削除

改正育児・介護休業法が2025年4月1日以降段階的に施行され、所定外労働の制限の対象となる子の年齢が小学校就学前まで延伸されることや、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について柔軟な働き方を実現するための措置が講じられることから、各認定基準にこれまで求められていた以下の要件が削除されました(現行則4条1項1号ト)。

【削除される要件】

3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置又は始業時刻変更等の措置」に準ずる制度を講じていること

 

【3】認定基準にかかる経過措置

今回の改正に伴う経過措置は以下のとおりです。

【認定基準にかかる経過措置】

施行日(2025年4月1日)前のくるみん認定、プラチナくるみん認定またはトライくるみん認定の申請については、改正前の基準が適用される。

施行日から2027年3月 31 日までの2年間のくるみん認定、プラチナくるみん認定またはトライくるみん認定の申請は、改正前の基準を適用することができる。

くるみん認定申請にかかる計画期間が施行日前後でまたがっている場合、改正後の新基準の適用にあたっては、2025年3月 31 日以前の実績は改正前の基準を前提に取り組んでいるため、計算期間には含めず、施行日以降の期間のみにおける実績で算出することも可能とする。

 

3.おわりに

今回は次世代法の省令改正について見てきました。2025年4月1日以降、新たに行動計画を策定する際は、状況把握や分析が必要となるため、省令の改正を踏まえた行動計画の策定について、早めに準備しておくことが肝要です。

次回は、指針の改正内容について見ていきます。

以上

 


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