2026.05.01
法改正情報
【2026年4月努力義務化】治療と就業の両立支援措置を分かりやすく解説!
改正労働施策総合推進法が2026年4月1日に施行され、職場における治療と就業の両立支援の取組みが事業主の努力義務として定められました。改正法では、具体的な措置等の内容について指針に定めることとされています。これを受けて、2026年2月に「治療と就業の両立支援指針」(令和8年2月10日 厚生労働省告示第28号)が告示され、具体的に事業主が講ずべき措置の内容が明らかになりました。
指針の内容は、従来厚生労働省より公表されていた「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」の内容から大きな変更はありませんが、今回の法改正により、これまでガイドラインとして示されてきたものが、法的根拠を持つ「指針」とされました。
そこで今回は、事業主に努力義務として求められる措置について、指針の内容をもとにポイントを解説していきます。
1.両立支援の趣旨
昨今の高齢者の就労の増加等を背景に、何らかの疾病の治療のために通院しながら働く労働者の割合は年々上昇しており、職場において、疾病を抱える労働者の治療と就業の両立への対応が必要となる場面は今後さらに増えることが見込まれています。近年の医療技術の進歩等により、かつては「不治の病」とされていたがん等の疾病においても生存率が向上し、その態様は「長く付き合う病気」に変化しており、り患した場合でも、必ずしもすぐに離職しなければならない状況とはいえなくなってきています。しかし、疾病を抱える労働者の中には、疾病に対する労働者自身の理解不足や職場の支援体制が不十分であることにより、離職に至るケースや、業務上の理由で適切に治療を受けられないケースもあります。今回の法改正では、 労働者の治療と就業の両立を支援するため、本人からの相談に応じて適切に対応できる体制・環境の整備および必要な就業上の調整や配慮が事業主の努力義務として求められることとなりました。
2.両立支援の対象
指針が対象とする疾病と労働者は以下のとおりとされています。
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① 対象疾病 :国際疾病分類に掲げられている疾病(負傷を含む。)であって、医師の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と判断され、かつ、就業の継続に配慮が必要なもの
② 対象労働者:雇用形態にかかわらずすべての労働者
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3.治療と就業の両立支援を行うための環境整備
指針では、治療と就業の両立支援を行うための環境整備として、以下の措置が掲げられています。
【治療と就業の両立支援を行うための環境整備としての措置】
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① 事業主による基本方針の表明等と労働者への周知
衛生委員会等で調査審議を行ったうえで、治療と就業の両立支援に取り組むにあたっての会社の基本方針や具体的な対応方法等のルールを策定し、労働者に周知することで、治療と就業の両立支援の必要性や意義を全社的に共有し、治療と就業の両立を実現しやすい職場風土を醸成すること。
治療と就業の両立支援を円滑に実施するため、すべての労働者および管理職に対して、治療と就業の両立支援に関する研修等を通じた意識啓発を行うこと。
治療と就業の両立支援は労働者からの申出を原則とすることから、労働者が安心して相談や申出を行えるよう、相談窓口や情報の取扱い等を明確にすること。
a)各事業場の実情に応じて以下のような休暇制度、勤務制度を導入し、治療のための配慮を行うこと。
・休暇制度 時間単位の年次有給休暇、傷病休暇、病気休暇等 ・勤務制度 時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度、試し出勤制度等 b)治療を受ける労働者から支援を求める申出があった場合に円滑な対応ができるよう、対応手順や、事業主および人事労務担当者、産業保健スタッフ、上司や同僚等の関係者の役割をあらかじめ整理しておくこと。
c)関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくりとして、主治医に労働者の就業の状況等に関する情報を適切に提供するための様式や、就業継続の可否、必要な就業上の措置および治療に対する配慮について主治医の意見を求めるための様式を定めておくこと。
d)制度および体制の実効性確保のため、労働者に対して、支援制度および相談窓口の周知を行うとともに、管理職に対して、労働者からの申出または相談を受けた際の対応方法や、支援制度および体制について研修等を行うこと。
e)支援制度および体制の整備等の環境整備に向けた検討を行う際には、衛生委員会等で調査審議するなど、労使や産業保健スタッフが連携し、取り組むこと。
治療と就業の両立支援の取組みにあたっては、産業保健スタッフや主治医と連携するとともに、必要に応じて、主治医と連携している医療ソーシャルワーカー・看護師等のほか、都道府県労働局、都道府県の産業保健総合支援センター、保健所等の保健師、社会保険労務士等の支援を受けること。
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4.両立支援の進め方
指針では、3.で述べた環境整備のほか、望ましいとされる具体的な治療と就業の両立支援の進め方について触れています。以下の図表では、指針の内容をフローチャート形式で整理しています。
【図表 両立支援の進め方】

以下、フローのポイントについて見ていきます。
①について、治療と就業の両立支援は、私傷病である疾病に関わるものであるため、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むのが基本となります。指針では、主治医から以下の情報の提供を受けることが望ましいとされています。
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a)症状、治療の状況(現在の症状、入院や通院による治療の必要性・期間、治療の内容・スケジュール、通勤や業務遂行に影響を及ぼし得る症状や副作用の有無とその内容等)
b)就業継続の可否に関する意見
c)望ましい就業上の措置に関する意見(避けるべき作業、時間外労働の制限、出張の可否等)
d)治療に対する配慮が必要な事項に関する意見(通院時間の確保、休憩場所の確保等)
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③について、就業を継続させるか否かの判断にあたっては、就業継続に関する希望の有無や、就業上の措置および治療に対する配慮に関する要望について労働者本人から聴取し、十分な話合いを通じて本人の了解が得られるよう努めることが必要とされています。なお、検討にあたっては、疾病にり患していることをもって安易に就業を禁止することがないよう留意が必要です。
④について、就業上の措置および治療に対する配慮を決定し実施する際、必要に応じて、具体的な措置や配慮の内容およびスケジュール等についてまとめた計画(治療と就業の両立支援プラン)を作成することが望ましいとされています。また、治療と就業の両立支援プランには以下の事項を盛り込むことが望ましいとされています。
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a)症状、投薬等の状況および今後の治療、通院の予定
b)就業上の措置(就業場所の変更、作業の転換、労働時間短縮等)および治療に対する配慮の具体的内容(通院時間の確保等)ならびに実施時期・期間
c)フォローアップの方法およびスケジュール(産業保健スタッフや人事労務担当者等による面談等)
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⑤~⑦について、指針では、「休業開始前の対応」、「休業期間中のフォローアップ」、「職場復帰の判断」のそれぞれについて、具体的に実施すべき事項を定めていますが、最終的に職場復帰が可能と判断した場合、労働者が職場復帰するまでの計画(職場復帰支援プラン)を作成することが望ましいとされています。職場復帰支援プランに盛り込むことが望ましい事項は、「治療と就業の両立支援プラン」と同様ですが、職場復帰支援プランの場合は、職場復帰日についても明示する必要があることとされています。
5.おわりに
今回は、治療と就業の両立支援について、指針の内容から環境整備や申出があった場合の進め方について見てきました。治療と就業の両立を支援していくため、労働者が安心して支援を求める申出を行うことができるようにあらかじめ体制および環境を整備しておくことが重要です。
以上
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