2026.04.15
法改正情報
【2026年10月義務化】カスハラ対策・求職者等セクハラ対策のポイント ~ 求職者等セクハラ対策編 ~
労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法が改正され、2026年10月1日以降、「カスタマーハラスメント」(以下「カスハラ」という。)および「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」(以下「求職者等セクハラ」という。)を防止するために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務づけられます。前回は事業主に義務づけられるカスハラ対策について見ましたが、今回は求職者等セクハラ対策について見ていきましょう。
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【2026年10月義務化】カスハラ対策・求職者等セクハラ対策のポイント~カスハラ対策編~
目次
【1】求職者等セクハラの概要
まず、求職者等セクハラとはどのような行為を指すのかについて、指針で示された具体的な解釈を見ていきます。
1.求職者等セクハラとは
求職者等セクハラとは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等による求職活動等が阻害されるものをいいます。なお、求職者等セクハラには同性に対する行為も含まれ、被害を受けた者の性的志向またはジェンダーアイデンティティに関わらないこととされています。
2.求職者等セクハラ定義の詳細
1.で見た定義の詳細は、以下のとおりです。
(1)「求職活動等」について
「求職活動等」とは、求職者が行う求職活動や求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものを含みます。指針では、以下のような活動が例示されています。
【求職活動等の例】
|
・企業の採用面接への参加 ・企業の就職説明会への参加 ・企業の雇用する労働者への訪問 ・インターンシップへの参加 ・教育実習、看護実習等の実習の受講 |
(2)「労働者」について
他のハラスメントと同様、「労働者」とは、正規雇用労働者、パートタイム労働者、契約社員等、事業主が雇用するすべての労働者をいいます。また、派遣労働者については、労働者と同様に事業主が講じる措置の対象とする必要があります。
(3)「性的な言動」について
「性的な言動」とは、性的な内容の発言および性的な行動を指し、指針では、以下のようなものが含まれるとされています。
【性的な内容の発言】
|
・性的な事実関係を尋ねること ・性的な内容の情報を意図的に流布すること 等 |
【性的な行動】
|
・性的な関係を強要すること ・必要なく身体に触ること ・わいせつな図画を配布すること 等 |
3.求職者等セクハラの典型的な例
1.および2.で見た求職者等セクハラの典型例として、指針では、以下のようなものが示されています。
【典型的な例(指針より一部抜粋)】
| ・ | 企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと |
| ・ | 面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛に感じてその求職活動の意欲が低下していること |
| ・ | 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること |
| ・ | インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること 等 |
【2】事業主が講ずべき措置
ここからは、指針の内容から事業主が求職者等セクハラ対策として講ずることが義務づけられている措置について見ていきます。
1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
事業主は、求職者等セクハラに関する方針の明確化、労働者および求職者等に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じる必要があります。
| ① |
求職者等セクハラの内容および求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に対する方針を周知・啓発すること (就業規則等への規定、社内報、パンフレットへの掲載・配布等) |
| ② |
求職者等セクハラにかかる性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること (就業規則等において求職者等セクハラ行為者に対する懲戒規定を定め、内容を周知・啓発する等) |
| ③ |
求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者および求職者等に周知・啓発すること (〔労働者に対して〕面談時間および場所の指定、やり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施すること〔求職者等に対して〕面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること等) |
なお、指針によれば、求職者等セクハラの発生の原因や背景には、性別役割分担意識に基づく言動もあると考えられ、こうした言動をなくしていくことが求職者等セクハラ防止の効果を高めるうえで重要とされています。このため、①において、求職者等セクハラの内容とともに、性別役割分担意識に基づく言動が求職者等セクハラ発生の原因や背景となり得ることなどについても周知・啓発することなどが求められます。
2.相談体制の整備
事業主は、求職者等からの相談に対し、相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する必要があります。また、相談窓口を設けるにあたっては、相談窓口担当者に対し、研修を実施したり、マニュアルを整備するなど、適切に対応できるようにしておくことが求められます。
なお、指針では、求職者等は人事担当者への相談をためらうことも想定されることから、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられるとされています。
3.事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、求職者等セクハラにかかる相談の申出があった場合には、その事案にかかる事実関係の迅速かつ正確な確認および適正な対処として、次の措置を講じる必要があります。
| ① |
事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認すること (相談窓口の担当者等が相談者および行為者とされる者の双方から事実確認をすること、事実確認が十分にできない場合は第三者からも事実関係を聴取すること等) |
| ② |
求職者等セクハラが生じた事実が確認できた場合、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと (被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、人事担当者による被害者への相談対応等) |
| ③ |
求職者等セクハラが生じた事実が確認できた場合、行為者に対する措置を適正に行うこと (行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること等) |
| ④ |
あらためて求職者等セクハラに関する方針を周知・啓発し、再発防止に向けた措置を講じること (〔労働者に対して〕面談時間および場所の指定、やり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施すること〔求職者等に対して〕面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること等) |
4.1から3までの措置と併せて講ずべき措置
事業主は、上記1から4までの措置と併せて次の措置を講じなければなりません。
| ① |
相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること |
| ② |
事実関係の確認等を理由として不利益な扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること |
【3】望ましい取組み
指針では、求職者等セクハラを防止するために望ましい取組みとして、以下の事項が挙げられています。
| ① |
求職活動等を行う学生が所属する教育機関が設置する相談窓口の担当者等から求職者等セクハラに関する情報提供があった場合には、連携し、適切な対応を行うこと |
| ② |
求職者等から、顧客、取引の相手方、施設の利用者等による求職者等セクハラに類すると考えられる相談があった場合には、【2】の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めること |
| ③ |
求職活動等におけるパワーハラスメント等に類する行為等に関し、以下の取組みを行うこと ・求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、求職活動等におけるパワーハラスメントおよび妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントに類する行為等についても、同様の方針を併せて示すこと ・求職者等からパワーハラスメント等に類する行為等に関する相談があった場合には、【2】の措置も参考にしつつ必要に応じて適切な対応を行うように努めること ・求職者等から、顧客、取引の相手方、施設の利用者等による求職活動等におけるカスタマーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、【2】の措置も参考にしつつ必要に応じて適切な対応を行うように努めること |
【4】おわりに
今回は2回にわたり、カスハラおよび求職者等セクハラ対策について見てきました。カスハラ対策については、基本方針や対処内容などを規定化またはマニュアル化することなど、求職者等セクハラ対策については求職者等と面談等を行う際の規則を定め研修等を実施することや、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等で周知すること等がそれぞれ求められます。改正によって義務化される点や、他のハラスメント対策の措置とは異なる点等に留意しながら、2026年10月に向けて、早めに自社のカスハラ・求職者等セクハラ防止対策の検討を始めることが肝要です。
以上
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