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人事労務コラム Column

2026.04.01

法改正情報

【2026年10月義務化】カスハラ対策・求職者等セクハラ対策のポイント ~ カスハラ対策編 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法が改正され、「カスタマーハラスメント」(以下「カスハラ」という。)および「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」(以下「求職者等セクハラ」という。)を防止するために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務づけられます。改正法の施行日は2026年10月1日です。

改正法において雇用管理上必要な措置の内容が指針に定めることとされているのを受けて、2026年2月にカスハラ・求職者等セクハラに関する指針(※)が告示され、具体的に事業主が講ずべき措置の内容が明らかになりました。

そこで、これから2回にわたり、事業主に義務づけられるカスハラ対策と求職者等セクハラ対策について、それぞれ詳しく見ていきます。今回は、カスハラ対策について見ていきましょう。

※「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」および「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

 

▽次回コラムをチェックする▽
【2026年10月義務化】カスハラ対策・求職者等セクハラ対策のポイント~求職者等セクハラ対策編~

 

【1】カスハラの概要

事業主が講ずべき措置について見る前に、カスハラとはどのような行為を指すのかについて、指針で示された具体的な解釈を見ていきましょう。

1.カスハラとは

指針では、カスハラの定義は以下のように定められています。

職場において行われる
  ① 顧客等の言動であって、
  ② その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして
    社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
  ③ 労働者の就業環境が害されるものであり、
 ①から③までの要素を全て満たすもの

 

2.カスハラ定義の詳細

1.で見た定義の詳細は、以下のとおりです。

(1)「職場」について

「職場において行われる」の「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外の場所(取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等)であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については「職場」に含まれます。

(2)「労働者」について

「労働者」とは、正規雇用労働者、パートタイム労働者、契約社員など、事業主が雇用するすべての労働者をいいます。また、派遣労働者については、労働者派遣法により派遣先の労働者とみなされますので、労働者と同様に、事業主が講じる措置の対象とする必要があります。

(3)「顧客等」について

「顧客等」とは、顧客、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者、その他事業に関係する者を指します。このため、商品の購入やサービスを利用する者のほか、取引先担当者や施設・サービスの利用者およびその家族なども含まれます。

なお、顧客等には、商品の購入や取引、サービスの利用等について、今後利用する可能性がある者も含みます。

(4)「社会通念上許容される範囲を超えた言動」について

社会通念に照らし、顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でない言動を指し、指針では、以下のようなものが典型的な例として示されています。なお、指針では、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることや、限定列挙でないことに十分留意し、労働者からの相談に広く対応するなど適切な対応を行うようにすることが必要とされています。

典型的な例(指針より一部抜粋)
 【言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
  ・そもそも要求に理由がないまたは商品・サービス等とまったく関係のない要求
  (性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること)
  ・契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
  (契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること)
  ・対応が著しく困難な、または対応が不可能な要求
  (契約金額の著しい減額の要求をすること)
  ・不当な損害賠償要求
  (商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること)     
 【手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの】
  ・身体的な攻撃<暴行、傷害等>
  (殴る・蹴る等の暴行、物を投げつける、つばを吐きかける等)
  ・精神的な攻撃<脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等>
  (SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーにかかる情報の投稿等をする、
   労働者の人格を否定するような言動を行う等)
  ・威圧的な言動
  (大きな声をあげて労働者や周囲を威圧する、反社会的な言動を行う等)
  ・継続的、執拗な言動
  (同様の質問を執拗に繰り返す、同様の電子メール等を執拗に繰り返し送り付ける等)
  ・拘束的な言動<不退去、居座り、監禁>
  (長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束する等)

 

(5)「労働者の就業環境が害される」とは

カスハラに該当する言動により、労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な影響が生じる等、労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。指針によれば、この判断にあたっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況でその言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。

【2】事業主が講ずべき措置

ここからは、指針の内容から事業主がカスハラ対策として講ずべき措置について見ていきます。なお、措置を講ずる際には、消費者法制に定められている消費者の権利や、障害者差別解消法における、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。

1.事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

事業主は、カスハラに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知の明確化およびその周知・啓発として、次の①および②の措置を講じる必要があります。

カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
 (社内報、パンフレット、社内ホームページ等への掲載・配布、研修、講習等の実施等)
カスハラの内容およびあらかじめ定めた対処の内容について管理監督者を含む労働者に周知すること
 (職場におけるカスハラへの対処の内容を規程に定める、顧客等への対応に関するマニュアル等に
  カスハラへの対処の内容を記載する、研修・講習等を実施する等)

 

2.相談体制の整備

事業主は、労働者からの相談に対し、相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する必要があります。また、相談窓口を設けるにあたっては、相談窓口担当者に対し、研修を実施したり、マニュアルを整備するなど、適切に対応できるようにしておくことが求められます。

3.事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、労働者からカスハラにかかる相談の申出があった場合には、その事案にかかる事実確認の迅速かつ正確な確認および適正な対処として、次の①から③の措置を講じる必要があります。

① 事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認すること
 (相談窓口の担当者等が、相談者から事実関係を確認することや、必要に応じて周囲の労働者からも
   事実確認を聴取したり、録音・録画などの客観的な証拠を確認すること等)
② カスハラが生じた事実が確認できた場合、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
 (管理監督者等が被害者に代わって対応することや被害者と行為者を引き離すための配置転換、
  被害者のメンタルケア等)
③ あらためてカスハラに関する方針を周知・啓発し、再発防止に向けた措置を講じること
 (カスハラに関する方針を社内報、パンフレット、社内ホームページ等にあらためて掲載・配布等することや、
  方針および対処の内容を周知・啓発するための研修、講習等をあらためて実施すること等)

 

4.対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置

事業主は、カスハラ抑止のための措置として、過度な要求を繰り返すなど、とくに悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知し、対処を行うことができる体制を整備する必要があります。対処の例として指針では、暴行、障害、脅迫などの犯罪に該当し得る行動については警察へ通報することや、行為者に対して警告文を発出すること店舗および施設等への出入りを禁止すること等が挙げられています。

5.1から4までの措置と併せて講ずべき措置

事業主は、上記1から4までの措置と併せて、次の①および②の措置を講じなければなりません。

相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること
相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

【4】他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力(努力義務)

事業主は、カスタマーハラスメントに関し、他の事業主から、事実関係の確認等の雇用管理上の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるよう努めなければならないこととされています。

【5】望ましい取組み

指針では、カスハラを防止するために望ましい取組みとして、以下の事項が挙げられています。

① カスタマーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組みを行うこと
 ・労働者が自社のサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図るための研修等の必要な取組みを行うこと
 ・労働者が顧客等への理解を深めるために必要な取組みを行うこと
② 労働者や労働組合等の参画を得つつ、雇用管理上の措置の運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること
③ 他の事業主が雇用する労働者に対してカスハラを行ってはならない旨の方針を示すこと

 

また、労働者に対してカスハラに関する方針の明確化等を行う際に、職場における事業主が雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者、個人事業主等)に対する顧客等の言動についても、同様の方針を併せて示すことが望ましいこととされています。

【6】おわりに

今回はカスハラ指針の内容から、事業主が講ずべき措置について見てきました。改正法施行後は、カスハラへの基本方針や対処内容などを規定化またはマニュアル化すること等が求められますので、2026年10月1日の施行に向けて、早めに準備を始めることが肝要です。

次回は、求職セクハラ対策について見ていきます。

以上

 


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