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人事労務コラム Column

2026.06.15

法改正情報

【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(前編)

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

このたび、同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことを踏まえ、厚生労働省の労働政策審議会(同一労働同一賃金部会)において制度見直しに向けた議論が行われ、「同一労働同一賃金ガイドライン」を含む省令および指針が改正されました(2026年10月1日施行・適用)。そこで、これから2回にわたり、同一労働同一賃金ガイドラインの改正内容について解説していきます。

 

1.同一労働同一賃金ガイドラインとは

まず改正内容を解説する前に、同一労働同一賃金の概要について見ていきます。

(1)同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、パートタイム・有期雇用労働法および労働者派遣法に基づく定めで、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指す施策です。
 パートタイム・有期雇用労働法では、同一労働同一賃金に関する基本的な考え方として以下の2つの定めがあり、事業主はこれらに沿った対応をする必要があります。

  均衡待遇        基本給・賞与その他の待遇ごとに、その性質・目的に照らして、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組みや運用など)、③その他の事情のうち、適切と認められるものを考慮して、正規雇用労働者との間に不合理な相違を設けてはならない
                               (パートタイム・有期雇用労働法第8条)
  均等待遇        ①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組みや運用など)が同じ場合は、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として、基本給・賞与その他の待遇のそれぞれについて差別的取扱いをしてはならない
                               (パートタイム・有期雇用労働法第9条)

 

(2)同一労働同一賃金ガイドラインについて

同一労働同一賃金ガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間に待遇差が存在する場合に、「均衡待遇」についてどのような差が不合理なものであり、どのような差が不合理なものでないのか、各種待遇ごとに原則となる考え方および具体例が示されたものです。原則となる考え方等に反した場合、待遇差が不合理と認められる等の可能性があります。
 なお、厚生労働省ホームページに掲載されているQ&Aでは、「ガイドラインに示されていない待遇や、具体例に該当しない場合についても、それぞれの待遇について労使で十分な検討をしていくことが望まれる」とされています。

2.ガイドラインの改正概要

次に、ガイドラインの改正内容について見ていきます。今回は、改正事項のうち、近年の最高裁判決を踏まえて見直された各種待遇にかかる記載をとりあげます。
 なお、(新規)と併記されたものは、今回の改正により新たに追加された待遇です。

(1)賞与

賞与については、従来の記載内容に留意事項が追記されました。概要は以下のとおりです。

・賞与の性質およびその目的には、労務の対価の後払い功労報償生活費の補助労働者の労働意欲の向上等さまざまなものが含まれ得る。
・「均衡待遇」の考え方に照らして、賞与の性質および目的が非正規雇用労働者にも当てはまるにもかかわらず、非正規雇用労働者に対し、正規雇用労働者との違いに応じた均衡のとれた内容を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て、賞与の性質およびその目的が当てはまらない他の非正規雇用労働者に比べ基本給を高く支給している等の事情もない場合、不合理と認められるものに当たり得る。

(2)退職手当(新規)

退職手当について、その取扱いにかかる留意事項が新たに記載されました。なお、記載内容は上記の(1)で示した賞与にかかる追記内容と同じです。

(3)無事故手当(新規)

正規雇用労働者と業務の内容が同一の非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の無事故手当を支給しなければならないこととされました。

(4)家族手当(新規)

労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の家族手当を支給しなければならない旨と、具体例(問題とならない/なる待遇差の例)が記載されました。また、留意事項として、配偶者の収入要件がある「配偶者手当」については、とくに女性の短時間労働者の就業調整の要因となっていると指摘されていることから、働き方に中立的な制度となるよう見直すことが望まれるとされています。

(5)住宅手当(新規)

住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合には、正規雇用労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない旨および具体例が新たに記載されました。また、留意事項として、転居を伴う配置の変更の有無にかかわらず支給される住宅手当についても不合理な待遇差を設けてはならない旨が補足されています。

(6)福利厚生施設

従来、ガイドラインでは、正規雇用労働者と同一の事業所で働く非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の福利厚生施設の利用を認めなければならないとされていましたが、今回の改正により、福利厚生施設の利用料金・割引率等の利用条件についても不合理な待遇差を設けてはならない旨が明記されました。

(7)病気休職

病気休職に「療養への専念を目的として付与する病気休暇を含む」ことが明記されました。また、正規雇用労働者に病気休職期間にかかる給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、正規雇用労働者と同一の給与の保障を行わなければならない旨が追記されました。

(8)夏季冬季休暇(新規)

非正規雇用労働者にも、正規雇用労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならないことおよび具体例が記載されました。

(9)褒賞(新規)

一定の期間勤続した労働者に付与する褒賞について、正規雇用労働者と同一の期間勤続した非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の褒賞を付与しなければならない旨が記載されました。

6.おわりに

今回はガイドラインの改正点のうち、各待遇の記載に関する見直しをとりあげました。本ガイドラインの改正にあたっては、非正規雇用労働者の待遇が改正後のガイドラインに即した内容となっているか確認を行うとともに、必要に応じて自社制度の見直しを行うなどの対応が求められます。
 次回は、待遇にかかる記載以外の改正事項について解説します。

以上


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