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人事労務コラム Column

2026.07.01

法改正情報

【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(後編)

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2026年10月1日より、「同一労働同一賃金ガイドライン」を含む改正省令および改正指針が施行・適用されます。そこで、今回も前回に引き続き、同一労働同一賃金ガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)の改正内容について見ていきます。

▽前回コラムをチェックする▽
【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(前編)

 

1.ガイドラインの改正概要

前編では、近年の最高裁判決を踏まえて改正された各種待遇にかかる記載の見直しについてとりあげましたが、後編ではそのほかの改正事項について解説します。

(1)正規雇用労働者の待遇引下げによる待遇差解消にかかる記載趣旨の明確化

事業主が正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇差の解消に取り組むにあたって、非正規雇用労働者の労働条件を引き上げるのではなく、正規雇用労働者の労働条件を不利益に変更することによって対応しようとする場合の記載内容が変更されました。

改正後は、正規雇用労働者の労働条件を不利益に変更することなく、非正規雇用労働者の労働条件の改善を図ることが求められることが明確に記載されました。

(2)パートタイム・有期雇用労働法第8条の「その他の事情」の明確化

パートタイム・有期雇用労働法第8条では、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲(人材活用のしくみや運用など)、③その他の事情のうち、適切と認められる事情を考慮して、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けてはならないとする「均衡待遇」の原則が定められています。

この考慮すべき事情のうちの「その他の事情」について、行政通達に具体例が示されていますが、今回の改正によりガイドラインにも記載されることとなりました。具体的には、「職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行、事業主と労働組合や過半数代表者等との間の交渉といった労使交渉の経緯や結果等の諸事情が『その他の事情』として想定される」とされました。

また、非正規雇用労働者から求めがあった場合に待遇の相違の内容および理由について事業主が十分な説明を行わなかったと認められる場合や、非正規雇用労働者の意向を十分に考慮せず一方的に待遇を決定した場合には、その事実も「その他の事情」に含まれ、待遇の相違が不合理と認められることを基礎づける事情として考慮されうる旨が明確化されました。

(3)いわゆる「正社員人材確保論」についての追記

「正社員人材確保論」とは、正規雇用労働者としての職務を遂行しうる人材の確保およびその定着を図る等の目的で、非正規雇用労働者より正規雇用労働者を優遇することに合理性があるとする考え方です。この考え方はこれまでいくつかの最高裁判決で示されてきたものですが、今回のガイドラインの改正により、この「正社員人材確保論」のみをもって直ちに正規雇用労働者と非正規雇用労働者と間の待遇差が不合理ではないと当然に認められるものではない旨が追記されました。

(4)無期雇用フルタイム労働者等へのガイドラインの趣旨の波及

無期雇用フルタイム労働者とは、所定労働時間が正規雇用労働者と同一であり、かつ、事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者をいいますが、無期雇用フルタイム労働者は、パートタイム・有期雇用労働法に規定する短時間・有期雇用労働者に該当しないことから、基本的には「均衡待遇」の考え方や同一労働同一賃金ガイドラインは適用されません。

しかし、今回の改正では、この無期雇用フルタイム労働者の労働契約について、次の事項が留意点として追加されました。

労働契約法第3条2項の規定により、労働契約は、就業実態に応じて均衡を考慮しつつ締結・変更されるべきものであること。
均衡の考慮にあたっては、ガイドラインの趣旨が考慮されるべきであること。
有期雇用労働者が無期雇用フルタイム労働者に転換する場合、転換後の労働条件を決定するにあたっては、当該有期雇用労働者と正規雇用労働者との間に不合理な待遇差がないかあらかじめ点検し、そのような待遇差がある場合には確実に解消することが求められること。
「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」第5条の規定により、無期転換後の労働条件を明示する場合においては、労働契約法第3条第2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について労働者に説明するよう努めなければならないとされていること。

 

なお、無期雇用フルタイム労働者と同様に、「多様な正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員)(※1~3)」についても均衡の考慮にあたってはガイドラインの趣旨が考慮されるべきものとされました。

※1 勤務地限定正社員とは、期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、勤務地が同一の事業所に雇用される通常の労働者の勤務地に比し限定され、かつ、通常の労働者と同等の待遇を受ける者をいう。
※2 職務限定正社員とは、期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、職務が同一の事業所に雇用される通常の労働者の職務に比し限定され、かつ、通常の労働者と同等の待遇を受ける者をいう。
※3 短時間正社員とは、期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短く、かつ、通常の労働者と同等の待遇を受ける者をいう。

 

(5)その他

ここまで見てきた改正内容のほか、ガイドラインに原則となる考え方や具体例が示されていない待遇であっても、その待遇差が不合理と認められる可能性があることや、待遇差解消等のため労使により議論していくことが望まれること、議論にあたっては非正規雇用労働者の意向を十分に考慮したうえで、取組みを進めることが望ましいこと等が追記されました。

2.おわりに

前回と今回の2回にわたり、ガイドラインの主な改正事項について見てきました。今回の改正を踏まえ、あらためて自社の正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇差が不合理なものとなっていないか確認することが望まれます。

以上


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