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人事労務コラム Column

2021.08.15

法改正情報

健康保険法等の改正ポイント(後編) ~任意継続被保険者制度および育児休業保険料免除要件の見直し~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前回の「健康保険法等の改正ポイント(前編)」では、被扶養者認定取扱基準の変更および傷病手当金の支給期間の通算化について解説しましたが、今回は、任意継続被保険者制度の見直しおよび育児休業中の保険料免除要件の見直しについて解説していきたいと思います。

 

前回コラム: 「健康保険法等の改正ポイント(前編)~被扶養者認定取扱基準、傷病手当金等の見直し~」

 

1.任意継続被保険者制度の見直し

任意継続被保険者制度とは、健康保険の被保険者が退職した場合、その後も引き続き退職前の健康保険に最大2年まで加入することができる制度ですが、今回の改正により、保険料の決定と資格喪失事由の見直しが行われることとなりました。いずれの改正も2022年1月1日から施行される予定です。

では、それぞれの内容について見ていきたいと思います。

 

(1)任意継続被保険者制度の保険料決定にかかる見直し

健康保険の保険料は、通常、労使折半が原則ですが、任意継続被保険者制度においては、任意加入の制度であるため、保険料の全額が被保険者負担となります。保険料額は、具体的に、以下のいずれか低い額に保険料率を乗じて算出することとされています。

従前の標準報酬月額
当該保険者の全被保険者の平均標準報酬月額

 

このため、退職前に高額な給与が支払われていた被保険者であっても、加入していた健康保険組合等の全被保険者の平均標準報酬月額の方が低い場合には、その平均標準報酬月額に保険料率を乗じた額が保険料として決定されます。

この点について、改正後は、①従前の標準報酬月額の方が②平均標準報酬月額より高い被保険者について、健康保険組合が規約に定めた場合には、従前の標準報酬月額(①)に保険料率を乗じた額を保険料とすることができることとされます。このため、健康保険組合によっては、改正後に任意継続被保険者の保険料の決定方法が変わる可能性がある点に留意が必要です。

 

(2)任意継続被保険者制度の資格喪失にかかる見直し

現行制度では、以下のいずれかに該当する場合に任意継続被保険者の資格が喪失することとされています。

従前の標準報酬月額
当該保険者の全被保険者の平均標準報酬月額
保険料を納付期日までに納付しなかったとき
被用者保険、船員保険、後期高齢者医療等の被保険者となったとき

 

このように、現状においては、任意継続被保険者が上記のいずれかの事由に該当する場合に限って資格を喪失することが認められており、任意に資格喪失することはできません。

この点について、改正後は、資格喪失事由に次の事由が追加され、被保険者の申請により資格喪失することができるようになります。

任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出た場合において、申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき

 

2.育児休業中の保険料免除にかかる要件の見直し

健康保険および厚生年金保険の被保険者が育児休業を取得する場合、申請により育児休業取得期間中の健康保険料、厚生年金保険料が全額免除されます。

現在、保険料が免除される期間については、育児休業を開始した月から育児休業の終了日の翌日が属する月の前月までの期間とされており、月の末日時点で育児休業を取得している場合に、当該月の保険料が免除されるしくみになっています(図表 ケース①参照)。

このように、育児休業取得にかかる保険料については、月末時点の育児休業等の取得状況によってのみ免除の対象となるか否かが判断されるため、同じ日数を取得しても休業取得日が月の途中の場合には免除の対象とならず、短期間の育児休業の場合、取得時期によって不公平が生じることとなっています。とくに、男性の場合、育児休業の取得期間が1ヵ月未満など短期間であることが多いことから、取得時期が保険料免除の対象となるか否かに大きく影響を与えることとなります。

改正後は、現行の保険料免除要件に加えて、月中であっても2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料が免除されることとなります(図表 ケース②参照)。また、賞与にかかる保険料については、連続して1ヵ月を超える育児休業取得者に限り、免除の対象とされます。この改正は、2022年10月1日から施行される予定です。

 

【図表】育児休業中の社会保険料免除の例
【図表】育児休業中の社会保険料免除の例

3.おわりに

今回見てきた健康保険法の任意継続被保険者制度および育児休業中の保険料免除要件の見直しにより、実務上の取扱いがこれまでと変わりますので、改正内容と施行時期をしっかりと把握しておくことが重要です。

とくに、育児休業中の社会保険料免除にかかる要件の見直しについては留意が必要です。育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業取得を促進するため、子の出生直後の時期に現行の育児休業より柔軟に取得しやすい新たな制度として「出生時育児休業」が創設され、2022年10月に施行される見通しです。この制度の創設により、短期間の育児休業の取得が増え、社会保険料免除にかかる申請の機会が増えることが考えられるほか、様式や提出ルールの変更等が見込まれるため、手続き漏れ等が起きないよう、改正内容をよく確認しておくことが大切です。

 

以上

 

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

※本コラムは、2021年8月にPHP研究所ビデオアーカイブズプラス『社員研修VAプラス会員専用サイト・人事労務相談室Q&A』で掲載された内容をリライトしたものです。

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