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人事労務コラム Column

2022.01.05

法改正情報

マイナンバー法および個人情報保護法の改正(前編) ~ マイナンバー法の改正 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

近年、マイナンバーや個人情報の取扱いについて改正が続いています。まず、2020年3月10日には「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「2020年改正法」という。)が公布され、続いて2021年5月19日には「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下「2021年改正法」という。)が公布されました。これらの改正法には、いずれも「個人情報保護法」および「マイナンバー法」(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の改正が含まれています。

改正の内容は多岐にわたりますが、ここでは雇用管理に関連する改正事項にポイントを絞り2回に分けて解説します。今回は、とくに実務に影響のある2021年改正法による「マイナンバー法の改正」について見ていきたいと思います。

1.マイナンバー法とは

マイナンバー法は、いわゆる「マイナンバー(個人番号)」の取扱い等について定めた法律ですが、同法では、マイナンバーを含む個人情報について「特定個人情報」として、「個人情報」より利用範囲や第三者提供できるケース等を限定し、厳格な保護措置を求めています。

2.改正の概要(2021年9月1日施行)

今回の改正は、2021年9月1日にすでに施行されています。

改正前は、特定個人情報の提供について、社会保障や税に関する事務のために行政機関や健保組合等に提供する場合に限って可能とされ、それ以外の事由では、原則として特定個人情報を第三者に提供することが禁止されていました。このため、企業の従業員や役員(以下「従業者等」という。)がグループ会社間で出向・転籍等により勤務先が変わった場合に、従業者等は前の勤務先に提供したマイナンバーをあらためて次の勤務先に提供しなければなりませんでした。

改正後は、従業者等の出向・転籍等があった場合において、本人の同意があるときは、前の勤務先から次の勤務先に当該従業者等の特定個人情報の提供ができることとされました。たとえば、「A社」の従業者等であった者が「A社」を退職して「B社」の従業者等になった場合、当該従業者等の同意を得れば、「A社」が「B社」に対して直接特定個人情報を提供することができるようになったわけです。なお、この改正は、グループ会社間だけでなく、まったく資本関係のない会社間で出向・転籍する場合や転職等をする場合も同様の取扱いとなります。

3.実務対応上の留意点

それでは、今回の改正における実務対応上の留意点についてガイドライン(「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」(以下、「ガイドライン」という。)の内容をもとに見ていきましょう。

(1)提供が認められる特定個人情報

今回の改正により提供が認められる特定個人情報の範囲は、あくまで社会保障、税分野にかかる事務(健康保険・厚生年金保険の取得届や給与支払報告書、支払調書の提出など)を処理するために必要な限度に限られます。たとえば、氏名、住所、前職の給与額等は必要な情報と想定されますが、前職の離職理由等、一般的に必要な情報と想定されない情報を提供することは認められません。

(2)従業者等からの同意の取得時期

従業者等の特定個人情報を出向先や転籍先に提供する場合、本人から同意を得ることが必要となりますが、ガイドラインでは、この同意は、出向・転籍・再就職先の決定以後に、具体的な提供先を明らかにした上で得る必要があるとされています。したがって、たとえば、出向・転籍の事実が決定していないにもかかわらず、入社時にあらかじめ出向・転籍時の特定個人情報の提供について同意を得ることはできないものと解されます。

(3)従業者等からの同意の取得方法

ガイドラインでは、従業者等の同意を得るにあたって、「どのような特定個人情報が(中略)提供されることになるのか、従業者等が認識した上で、同意に係る判断を行うことができるよう、(中略)留意する必要がある」とされているため、あらかじめどのような情報を提供するのかについて従業者等に明示する必要があると考えられます。

また、従業者等から同意を得るための具体的な方法としては、口頭による意思表示のほか、書面(電磁的記録を含む)の受領、メールの受信、同意する旨の確認欄へのチェック、Web上のボタンのクリック、タッチパネルへのタッチ、ボタン等による入力などが考えられます。

(4)本人確認

マイナンバー法では、本人またはその代理人から個人番号の提供を受けるときは、提供された個人番号が正しい番号であるかの確認(番号確認)および個人番号の提供を行う者が正当な持ち主であるかの確認(身元確認)をする必要があるとされています(同法16条)が、今回の改正に基づいて特定個人情報が提供された場合には、提供先における本人確認は不要とされました。

4.おわりに

今回は、改正法のうち、とくに雇用管理に関連があるものとして、2021年改正法によるマイナンバー法の改正を見てきました。次回は、2020年改正法による個人情報保護法の改正について見ていきたいと思います。

以上

次回コラム: 「マイナンバー法および個人情報保護法の改正(後編)」

 

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所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

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