2025.12.01
法改正情報
【2025年10月施行】雇用保険法改正・教育訓練休暇給付金が創設されました
雇用保険法の改正により、教育訓練給付の一つとして新たに「教育訓練休暇給付金」が創設されました(2025年10月1日施行)。そこで今回は、教育訓練休暇給付金制度の概要について見ていきます。また、厚生労働省(ハローワーク)から公表された本給付に関するQ&Aも実務上参考になりますので、そちらも一部とり上げて解説します。
1.教育訓練休暇給付金の概要
教育訓練休暇給付金は、自発的な能力開発を目的として、労働者が教育訓練のための休暇(教育訓練休暇)を取得した場合に、その休暇期間中の生活保障として賃金の一定割合が支給される制度です。以下、詳しく見ていきます。
(1)支給対象者
教育訓練休暇給付金の支給対象者は、雇用保険の一般被保険者であって、次の両方の要件を満たす者とされています。
| ① | 教育訓練休暇の開始前2年間に12ヵ月以上の被保険者期間があること |
| ② | 教育訓練休暇の開始前に5年以上雇用保険に加入していた期間があること |
①の「開始前2年間」について、疾病、負傷等により賃金の支払いを受けることができなかった期間がある場合には、その日数を2年間に加算することができます(最大4年間まで)。また、「被保険者期間」について、原則として賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が算定の対象となります。
②の雇用保険に加入していた期間は、基本的に被保険者として雇用された期間を通算した期間ですが、過去にいわゆる失業手当(基本手当)や教育訓練休暇給付金、(出生時)育児休業給付金を受けたことがある場合には、通算できない期間が生じることがあるため、留意が必要です。なお、離職期間がある場合であって、その期間が12ヵ月以内であるときは、離職前後の被保険者期間を通算することができます。
(2)支給対象となる休暇
支給対象となる休暇は、次のすべての要件を満たすものとされています。
| ① | 就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇であること | |
| ② | 被保険者本人が教育訓練を受講するために自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇であること | |
| ③ | 次のa.~c.の教育訓練等を受けるための休暇であること | |
| a. | 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校または各種学校が提供する教育訓練等 | |
| b. | 教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等 | |
| c. | 職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等) | |
①について、教育訓練以外の目的を含む休暇制度であっても、被保険者が教育訓練を受講するための休暇を取得した場合は支給対象となります。
②について、休暇はあくまで被保険者本人が自発的に取得することが必要であり、会社の業務命令で取得する場合は、給付金の対象となりません。一方で、上司からの案内がきっかけで取得した休暇であっても、本人の意思で取得した場合は、支給対象となります。
(3)給付の内容
教育訓練休暇給付金は、休暇開始日から起算して1年間の受給期間内において教育訓練休暇を取得した日について受給することができます。支給額は、いわゆる失業給付(基本手当)の基本手当日額の算定方法と同様であり、休暇開始前6ヵ月に支払われた賃金(賞与等を除く。)の合計を180で除した額の45%~80%(給付日額)に給付日数を乗じた額とされています。
給付日数は、休暇開始前に加入していた雇用保険期間に応じて以下のとおりとされています。
| 加入期間 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|
| 所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
2.教育訓練休暇給付金に関するQ&A
これまで教育訓練休暇給付金の概要について見てきましたが、ここからは、厚生労働省(ハローワーク)から公表されているQ&Aのうち、とくに実務上のポイントが含まれるものをとり上げます(以下のQ&Aの内容は、一部要約して掲載しています)。
| 教育訓練休暇の期間中は無給であることが必要とされているが、手当などはこれに含まれるか。 |
| 資格取得のための手当であれば含まれない。 |
解説
事業主から教育訓練休暇中に資格取得のための手当(教育訓練の受講費用や資格試験の受験料の一部補助等)が支給されている場合でも、就労の対価として支払われるものではないことから、教育訓練休暇給付金が不支給となるものではないとされています。
| 教育訓練休暇中に、週1回の出勤を求めることは可能か。 |
| 教育訓練休暇中に出勤を求めることは認められない。 |
解説
教育訓練に専念するため、休暇中に出勤を求めることは認められず、30日以上の連続した無給の休暇を取得させる必要があります。なお、休暇開始時に予期していなかった理由により、結果的に収入を伴う就労を実施した日があった場合、その日については教育訓練休暇給付金の支給を受けられないこととされています。
3.おわりに
今回は、新たに創設された教育訓練休暇給付金の内容について見てきました。今回の給付金の創設により、労働者の自主的なスキルアップやリ・スキリングの促進が期待されます。
以上
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