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人事労務コラム Column

2018.12.01

特集

職場のパワーハラスメントと対応実務

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2018年は、スポーツ界や芸能界などでパワーハラスメントが大きく取り沙汰され、社会問題化しましたが、職場におけるパワーハラスメントも近年増加の一途をたどっています。都道府県労働局に寄せられる労働相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが6年連続で最多となっており、その中でもパワハラに関するものが最も多く、職場内でのパワハラ防止対策を講ずることは今や喫緊の課題になっているといえます。

そこで、今回は、職場のパワーハラスメントとは何か、そして企業はどのような対応策を講じるべきかについて解説します。

1.職場のパワーハラスメントとはなにか

まず、職場のパワーハラスメントとは何かについて見ていきたいと思います。2018年3月に発表されたパワハラ防止対策検討会の「報告書」では、職場のパワーハラスメントについて、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいうとされています。この点について、もう少し詳しく見てみましょう。

(1)「職場内の優位性を背景に」行われる行為とは

まず、職場内の優位性を背景に行われる行為には、職務上の地位が上位の者による行為だけでなく、人間関係や専門知識など様々な優位性が含まれることとされており、先輩・後輩や同僚、部下による行為も含まれる点に留意が必要です。

たとえば、パソコンの操作方法が分からない上司を部下が馬鹿にしたり、新任上司の指示命令を部下全員で無視する行為などがこれに該当します。

(2)「業務の適正な範囲を超えて」行われる行為とは

つぎに、業務の適正な範囲を超えて の部分についてですが、個人の受け取り方によってはハラスメントと感じる場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワハラには当たらないこともあります。この判断にあたっては、問題となった指導や注意が社会通念上許容される範囲を超えているか否かがポイントとなります。

たとえば、業務上明らかに必要性のない行為や、業務の目的を大きく逸脱した行為、業務を遂行するための手段として不適当な行為、行為の回数、行為者の数等、その様態や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為などがこれに当たります。具体的には、私的な使い走りを強要したり、業務上必要でない単純作業を繰り返し行わせる、些細なミスであるにもかかわらず土下座を強要するなどの行為がこれに該当します。

(3)「精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」とは

さらに、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為については、たとえば、暴力により傷害を負わせる行為や、著しい暴言を吐くなどにより人格を否定する行為、何度も大声で怒鳴る、厳しい叱責を執拗に繰り返すなどして恐怖を感じさせる行為、長期にわたる無視や能力に見合わない仕事を与えることにより、就業意欲を低下させる行為などがこれに当たります。

2.企業がとるべき具体的な対応策

職場のパワハラは、被害者や周囲の従業員の労働意欲・生産性の低下を招くなど、職場環境の悪化をもたらす行為であり、また、被害者の訴えによりパワハラが不法行為と判断された場合には、損害賠償責任による経済的損失を被るばかりでなく、企業のイメージダウンにもつながります。このため、パワハラ対策を講じることは、企業のリスクマネジメントを考える上で非常に重要といえます。そこでここからは、実際に職場のパワハラが起こった際に、企業が講じるべき具体的な対応策や予防策について見ていきたいと思います。

パワハラ防止対策検討会における「報告書」では、事業主に義務付ける対応策として、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント、いわゆるマタニティハラスメント等を防止するために事業主に義務付けられている雇用管理上講ずべき措置と同様に、つぎの4つの措置を義務付けるのが望ましいとしています。

まず1つ目は、「事業主の方針等の明確化、周知・啓発」です。社内報や社内ホームページ等にハラスメントを禁止する旨の方針を記載・配布したり、パワハラの行為者について厳正に対処する旨の方針や対処の内容を就業規則等に規定することなどがこれに当たります。

2つ目は、「相談等に適切に対応するために必要な体制の整備」です。具体的には、被害を受けた労働者からの相談に対応するため、相談窓口を設置することがこれに当たります。

3つ目は、「事後の迅速・適切な対応」です。被害者から相談があった場合、その事案に関する事実関係を迅速かつ正確に確認し、必要に応じて、被害者と行為者を引き離すための配置転換等の適切な対応を行うほか、行為者に対しては、パワハラに関する規定にもとづいて必要な処分等を行い、研修を受講させるなど再発防止に向けた対策を講じることなどが考えられます。

4つ目としては、パワハラに関する相談者や行為者等の情報について、プライバシーを保護することや、パワハラに関して相談したり事実関係の確認に協力したことを理由として不利益な取扱いを行わないことなどが挙げられます。

3.おわりに

職場でパワハラが発生する要因の1つとして、従業員同士のコミュニケーションが不足していることが少なくありません。このため、職場のパワハラを予防するためには、日常的に従業員同士の会話の機会を設けるようにしたり、定期的に面談やミーティングを行うなど、風通しのよい職場環境を作ることが大切です。また、パワハラについて正しい理解を促すため、社内研修やセミナーを行うことなども有効です。

今回は、パワハラとは何か、そして企業が講じるべき対応策はどのようなものかについて見てきました。パワハラは、現時点では、具体的な法律の整備がなされていませんが、今後、セクハラやマタハラなどと同様に、さきほど述べた雇用管理上の措置が法令によって義務付けられる見通しです。こうした中、企業としては、今のうちから具体的な対応策について検討を行い取り組んでいくことが重要といえます。

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

※本コラムは、「日経トップリーダー」経営者クラブ『トップの情報CD』(2018年12月号、日経BP発行)での出講内容を一部編集したものです。

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