トップマネジメントから人事・労務の実務まで安心してお任せください!

人事労務コラム Column

2021.05.01

法改正情報

70歳までの就業機会確保措置(前編)

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2021年4月より、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正施行されました。本改正では、企業に対して労働者が70歳に到達するまでの就業機会確保措置を講ずることが努力義務とされており、措置の内容には70歳までの継続雇用制度や創業支援等措置などがあります。今回は、主に70歳までの継続雇用制度の内容について見ていきたいと思います。

 

1.改正内容のポイント

まず、従来より義務付けられている65歳までの雇用確保措置について見たうえで、改正法により努力義務化された70歳までの高年齢者就業確保措置について見ていきたいと思います。

 

(1)65歳までの雇用確保措置(義務)

高年齢雇用安定法では、従来より、事業主が定年を定める場合に定年年齢を60歳以上とするとともに、60歳まで労働者を雇用していた事業主に対して、65歳までの雇用確保措置として、以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。

65歳までの定年の引き上げ
定年制の廃止
65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入
(特殊関係事業主(注)を含む)
(注) 特殊関係事業主とは、自社の子法人等、親法人等、親法人等の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等を指します(以下同じ)。

 

(2)70歳までの高年齢者就業確保措置(努力義務)

2021年4月施行の改正高齢者雇用安定法では、上記の雇用確保措置義務に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずることが努力義務として新設されました。

 

70歳までの定年の引き上げ
定年制の廃止
70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入
(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a) 事業主が自ら実施する社会貢献事業
b) 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
※ ④、⑤の詳細については次回コラムにて解説します。

 

③のケースにおいて、特殊関係事業主や他の事業主で継続雇用する場合、自社と継続雇用先の会社との間で、高年齢者を継続して雇用することを約する契約を締結する必要があります。また、「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」では、他社で継続雇用する場合であっても、可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容および労働条件とすることが望ましいとされています。

 

2.対象者選定基準の留意事項

前述したように、高年齢者就業確保措置は努力義務であるため、すべての高年齢者とせず、一定の基準を設けて対象者を限定することもできるものと解されます。基準の策定にあたっては、労使間で十分に協議のうえ、各企業等の実情に応じて定められるべきものであり、その内容は原則として労使に委ねられており、過半数労働組合等(過半数労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)の同意を得ることが望ましいこととされています。ただし、労使間で十分に協議したうえで定められた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、法の趣旨や他の労働関係法令、公序良俗に反するものは認められません。

たとえば、「会社が必要と認めた者」や「上司の推薦がある者」に限定することは、実質的に基準を定めていないのと変わらないため、法の趣旨にそぐわないものと解されます。また、「男性(女性)」や「組合活動に従事していない者」に限定することは、それぞれ男女差別(男女雇用機会均等法違反)や不当労働行為(労働組合法違反)に該当するため、これらを選定基準として設けることも認められないものと解されます。

なお、対象者を限定する基準については、

意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)、
必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)、

という2点に留意して策定することが望ましいこととされています。

 

3.高年齢者が離職する際の留意事項

高年齢者雇用安定法では、事業主に対して、45歳以上65歳未満の高年齢者が解雇その他事業主の都合により離職する場合において再就職を希望するときは、求職活動に対する経済的支援や再就職、教育訓練受講等のあっせんなどの「再就職援助措置」を講ずるよう努めなければならないこととされています。また、高年齢者が希望する場合は、求職活動支援書を本人に交付する必要があります。このほか、同一の事業所において1ヵ月以内に5人以上の高年齢者が解雇その他事業主の都合により離職する場合は、多数離職届を公共職業安定所に届け出なければなりません。これらの措置の対象範囲は、今回の法改正によって70歳までの就業確保措置を講じた場合、70歳未満まで拡大されます。

原則として、雇用している高年齢者が離職する場合、または創業支援等措置に基づいて高年齢者と業務委託契約を締結している場合には、再就職援助措置の実施および多数離職の届出を行わなければなければなりません。ただし、他社での継続雇用制度で制度の上限年齢(70歳未満の場合に限る。)に達した高年齢者や、他の団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度により就業する高年齢者については、定年まで雇用していた事業主が実施することとなります。

 

4.おわりに

今回は、改正高齢者雇用安定法における70歳までの就業機会確保措置のうち、70歳までの継続雇用制度について見てきましたが、前述したとおり、改正法は、従来の65歳までの継続雇用制度について70歳まで引き上げることを趣旨としています。また、これに加えて高年齢者が解雇等により離職する場合の再就職支援措置の対象範囲も拡大されますので、あわせて確認しておくと良いでしょう。

次回は、70歳までの就業機会確保措置のうち創業支援等措置の内容について見ていきたいと思います。

以上

 

次回コラム: 「70歳までの就業機会確保措置(後編)」

 


 

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

※本コラムは、2021年5月にPHP研究所ビデオアーカイブズプラス『社員研修VAプラス会員専用サイト・人事労務相談室Q&A』で掲載された内容をリライトしたものです。

Contact お問い合わせ

人事・労務のご相談なら
ヒューマンテック経営研究所へ

> お問い合わせはこちら