2025.12.15
法改正情報
【2025年7月新設】キャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延長支援コース」について
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員への登用や処遇改善の取組みを実施した事業主に対して支給される助成金です。
このキャリアアップ助成金について、労働者がいわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができるよう、新たに「短時間労働者労働時間延長支援コース」(以下「本コース」という。)が創設されました。
そこで今回は、助成金の概要について解説するとともに、厚生労働省が公表しているQ&Aから実務上参考になるものをとり上げて見ていきます。
1.「短時間労働者労働時間延長支援コース」の創設
本コースは、短時間労働者が手取り収入の減少を避けるため就業調整(働き控え)を行う、いわゆる「年収の壁」への対応策として創設されました。
「年収の壁」への対応策としては、すでに2023年10月より「社会保険適用時処遇改善コース」による助成が行われていますが、同コースは社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用にかかる「106万円の壁」への対応を目的としたものです。一方、今回新設された本コースは、主に健康保険の被扶養者の収入要件にかかる「130万円の壁」への対応策として位置づけられています。
2.助成金の概要
本コースは、2025年7月1日以降、労働者の労働時間を延長して社会保険に加入させるとともに、収入を増加させる取組みを行った企業に対して助成金を支給する制度で、労働者1人あたり最大75万円が助成されます。
「130万円の壁」は「106万円の壁」に比べて、壁を越えるにあたって社会保険の保険料負担が増加することから、労働者の収入増加のための労働時間の延長幅や賃金増加の幅が大きくなります。このため、助成額は「社会保険適用時処遇改善コース」を上回る金額となっています。
3.取組みの要件と助成額
本コースでは、1年目の取組みとして、週所定労働時間を延長し、賃金を一定割合以上増額する措置を講じることによって労働者を新たに社会保険に加入させた場合に、企業規模に応じて労働者1人あたり最大50万円が助成されます。また、2年目にさらに労働時間の延長または賃金を増加させる取組みを行った場合は、労働者1人あたり最大25万円が追加で支給されます。取組みの要件および労働者1人あたりの助成額は次のとおりです(図表参照)。
【図表 取組みの要件と助成額】
① 取組み1年目
| 要 件 | 1人あたりの助成額 | |||
|---|---|---|---|---|
| 週所定労働時間の延長 | 賃金の増額 | 小規模企業※1 | 中小企業※2 | 大企業 |
| 5時間以上 | - | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 4時間以上5時間未満 | 5%以上 | |||
| 3時間以上4時間未満 | 10%以上 | |||
| 2時間以上3時間未満 | 15%以上 | |||
② 取組み2年目
| 要 件 | 1人あたりの助成額 | |||
|---|---|---|---|---|
| 週所定労働時間の延長 | 賃金の増額 | 小規模企業※1 | 中小企業※2 | 大企業 |
| 労働時間をさらに 2時間以上延長 |
- | 25万円 | 20万円 | 15万円 |
| - | 基本給をさらに 5%以上増加また は昇給、賞与、退 職金制度の適用 |
|||
4.事業主向けQ&A
ここまで助成金の概要について見てきましたが、ここからは、厚生労働省から公表されているQ&Aについて、とくに実務上ポイントとなるものをとり上げます。なお、以下のQ&Aの内容は、一部要約して掲載しています。
【問4-1】
|
Q.複数年かけて支給要件を満たす場合も助成対象にすると聞いているが、これは複数年にわたり、助成を受け続けることができるということか。
|
| A.複数年にわたって助成を受け続けられるものではない。 |
解説
本コースにおいて、複数年にわたって支給要件を満たす場合でも、対象労働者が社会保険の適用対象となることは、対象労働者のキャリアアップにつながる取組みであることから助成対象とされています。
ただし、この場合でも、助成金を受給できるのは、新たに労働者が労働時間の延長等の要件を満たし、かつ、社会保険の適用を受けた場合であり、社会保険が適用されていない段階で助成を受けることはできません。このため、複数年にわたり助成を受け続けられるものではないこととされています。
【問4-2】
|
Q.複数年かけて支給要件を満たす取組みを行う場合、本コースの施行前に行った取組みも対象に含まれるか。
|
| A.施行後(2025年7月1日)以後に行った取組みが対象となる。 |
解説
複数年かけて支給要件を満たす取組みを行う場合には、本コースの施行(2025年7月1日)以後に行った取組みが対象であり、それ以前の取組みは対象とはなりません。
5.おわりに
今回はキャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延長支援コース」の内容について見てきました。労働者がいわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができるよう、本助成金の活用が期待されます。
なお、キャリアアップ助成金を申請するにあたっては、取組みを行う前にキャリアアップ計画書を作成する必要があることに留意が必要です。また、対象労働者についても詳細な要件がありますので、厚生労働省のホームページや助成金のパンフレット等で事前に確認するとよいでしょう。
以上
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