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人事労務コラム Column

2026.02.15

法改正情報

【法改正対応!】2026年4月施行 主な法改正事項のまとめ(後編) ~ 労働施策総合推進法、女性活躍推進法、労働安全衛生法 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

近年、労働関係諸法令に関する改正が頻繁に行われていますが、本年も多くの法改正事項が施行されます。今回は、前回のコラムに引き続き2026年4月に施行される人事・労務の実務に関係する主な法改正事項について見ていきます。

▽前回コラムをチェックする▽
【法改正対応!】2026年4月施行 主な法改正事項のまとめ(前編)~ 健康保険法・子ども・子育て支援法、厚生年金保険法、確定拠出年金法 ~

 
 

1.2026年4月施行の主な改正事項

2026年4月施行の主な改正事項の全体像は図表1のとおりです。今回は、このうち、労働施策総合推進法、女性活躍推進法、労働安全衛生法の改正について見ていきます。

【図表1 2026年4月施行の主な改正事項】下線がついている項目は関連コラムにリンクしています。

法律 改正項目
健康保険法 被扶養者の認定における年間収入の取扱いの見直し※
子ども・子育て支援法
健康保険法
子ども・子育て支援金制度の開始※
厚生年金保険法 在職老齢年金制度の支給停止基準額の引上げ※
確定拠出年金法

企業型DCにおけるマッチング拠出制限の撤廃※

企業型DCにおける手続きの簡素化※
労働施策総合推進法 治療と就業の両立支援対策の強化(努力義務)
女性活躍推進法 情報公表義務の適用拡大等
労働安全衛生法 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進
高年齢者の労働災害防止のための措置の強化(努力義務)

※の改正内容は「2026年(令和8年)4月施行 主な法改正事項のまとめ(上)」参照

 

2.改正法の概要

では、各改正の概要について見ていきます。

(1)治療と就業の両立支援対策の強化(労働施策総合推進法)※努力義務

高齢者の就労増加や医療技術の進歩を背景に、病気を治療しながら働く労働者は年々増えており、今後も一層の増加が見込まれています。こうした状況を踏まえ、治療と就業の両立支援を目的として、労働施策総合推進法が改正されました。改正法が施行される4月1日以降は、事業主に対して、労働者が治療と就業を両立できる環境を整備する努力義務が課されます。改正法では、事業主が講じる措置の具体的な内容は指針に定めることとされており、両立支援のため環境整備として、以下の措置が盛り込まれています(図表2)。

【図表2 治療と就業の両立支援の環境整備と個別の両立支援の取組み】

環境整備

・基本方針の表明および労働者への周知

研修等による意識啓発

相談窓口等の明確化

・治療と就業の両立支援に関する制度・体制の整備

事業場内外の連携

 

これらのほか、指針には、労働者が両立支援を必要とする場合の望ましい進め方として、主治医の意見を踏まえた「両立支援プラン」休業後の「職場復帰支援プラン」を作成することおよびそのプランに沿って就業上の措置等の必要な取組みを実施することなどが盛り込まれています。

今回の改正は努力義務ですが、人材不足が叫ばれるなか、治療と就業の両立の問題は、企業にとっても対応すべき重要な課題です。労働者本人から申出があった場合に適切に対応できるよう、自社の方針等を明確にしておくことが望まれます。

(2)情報公表義務の適用拡大等(女性活躍推進法)

女性活躍推進法の改正により、情報公表義務が課される企業の範囲が拡大されます。

情報公表とは、女性活躍推進法で義務づけられている事項の一つで、自社の女性の活躍に関するデータを社外に向けて公表することです。情報公表する項目は全部で16項目あり、以下の2つの区分に分類されています。

① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供(9項目)
② 職業生活と家庭生活の両立(7項目)

今回の改正により、上記の16項目のうち、これまで従業員数301人以上の企業に情報公表が義務づけられていた「男女間賃金差異」について、101人以上300人以下の企業に公表義務が拡大されます。また、新たに「女性管理職比率」について、101人以上の企業に公表が義務づけられます。

改正後は、常時雇用される労働者が301人以上の企業は、①の区分の項目である「男女間賃金差異」および「女性管理職比率」を必ず公表する必要があり、さらに上記①と②の区分ごとに任意の項目を1つずつ、合計4項目以上の情報を公表する必要があります。

一方、常時雇用される労働者数が101人以上300人以下の企業は「男女間賃金差異」および「女性管理職比率」を必ず公表する必要があり、それ以外に任意の1項目以上の合計3項目以上の公表が必要となります。なお、情報公表が努力義務とされている100人以下の企業は、改正による変更はなく、すべての項目から任意の1項目以上の公表でよいこととされています。

改正前後の情報公表項目を企業規模別に整理すると、下表のとおりです(図表3)。

【図表3 改正前後の情報公表項目(下線が変更点)】

企業規模(公表義務の有無) 改正前 改正後
301人以上(義務)
・男女間の賃金差異(必須)
・①、②のそれぞれの区分から任意の項目を1項目以上

(合計3項目以上)

男女間の賃金差異(必須)
女性管理職比率(必須)
・①、②のそれぞれの区分から任意の項目を1項目以上

(合計4項目以上)

101人以上300人以下
(義務)
・①、②のすべての項目から任意の項目を1項目以上
男女間の賃金差異(必須)
女性管理職比率(必須)
・①、②のすべての項目から任意の項目を1項目以上

(合計3項目以上)

100人以下(努力義務)
・①、②のすべての項目から任意の項目を1項目以上

(変更なし)

 

今回の改正により101人以上の企業は、新たに自社の男女間の賃金差異や女性管理職比率等のデータを把握し、公表する義務が生じますので、早めの準備が肝要です。

(3)個人事業者等に対する安全衛生対策の推進(労働安全衛生法)

個人事業者等に対する安全衛生対策を推進するため、労働安全衛生法の改正が段階的に進められていますが、2026年4月1日より、元方事業者および関係請負人の労働者が混在する作業現場における元方事業者の措置義務の対象が拡大されます。

元方事業者には、災害防止のために必要な指導や連絡調整等を講じることで統括的な安全衛生管理を行う義務がありますが、従来はその対象が自社および関係請負人の労働者に限定されていました。改正後は、個人事業者等を含む同一場所で働くすべての作業従事者へ対象が拡大されます

また、政令で定められた機械等または建築物を他の事業者に貸与する者が講ずべき災害防止措置についても、個人事業者等や労働者以外の作業従事者に対象が拡大されます。

(4)高年齢者の労働災害防止のための措置の強化(労働安全衛生法)※努力義務

高年齢者の就労拡大に伴い、雇用者全体に占める60歳以上の労働者の割合は年々増えており、それに伴って労働災害による死傷者数も増加傾向にあります。その背景として、高年齢者は通常の労働災害リスクに加え、加齢に伴う筋力・バランス能力の低下や身体機能の衰えなどにより、追加的なリスクを抱えていることが挙げられます。

こうした状況を踏まえ、高年齢者の労働災害防止のために高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の整備や作業管理など、必要な措置を講ずることが事業者の努力義務とされます

事業者が具体的に講ずべき措置として以下の措置が指針で示されています(図表4)。

【図表4 事業者が講ずべき措置】

安全衛生管理体制の確立
経営トップによる方針表明と体制整備
高年齢者の労働災害防止のためのリスクアセスメントの実施
職場環境の改善
身体機能の低下を補う設備・装置の導入
高年齢者の特性を考慮した作業管理
高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
健康状況の把握
体力の状況の把握
健康や体力の状況に関する情報の取扱い
高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえた対応
高年齢者の状況に応じた業務の提供
心身両面にわたる健康保持増進措置
安全衛生教育
高年齢者に対する教育
管理監督者等に対する教育

 

3.おわりに

前回と今回の2回にわたり2026年4月に施行される改正事項について解説を行ってきました。改正事項が多岐にわたるため、改正内容を正確に把握し、自社の実務対応に漏れが生じないよう十分に備えることが重要です。

以上

 


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