2022.06.01
法改正情報
【2022年10月施行】育児休業等期間中の社会保険料免除要件の概要と実務上のポイント(前編) ~ 育児休業等期間中の社会保険料免除制度が変わります ~
健康保険法および厚生年金保険法の改正により、2022年10月以降、育児休業等期間中の社会保険料免除制度(以下「免除制度」という。)が大きく変わります。現行の免除制度の課題に対応しつつ、同時期に施行される改正育児・介護休業法に基づく「出生時育児休業」および「育児休業の分割取得」等により想定される短期間の育児休業の取得に対応するため、現行の免除制度が見直されることとなりました。
これに関し、本年3月31日には、厚生労働省から『育児休業期間中の保険料免除要件の見直しに関するQ&A』(以下「Q&A」という。)が公表され、免除制度の詳細な取扱い方法が示されました。
そこでまず前編で免除制度の変更のポイントについて見たうえで、後編において実務上の取扱いに関するQ&Aについて解説していきたいと思います。
1.免除制度の概要(2022年9月まで)
免除制度は、満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)の期間について、被保険者から申出があった場合に、事業主が「育児休業等取得者申出書」(以下「申出書」という。)を年金事務所等に提出することにより、健康保険・厚生年金保険の保険料が被保険者負担分・事業主負担分ともに免除される制度です。
改正前における保険料免除期間は、育児休業等開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までとされており、免除される月の保険料のほか、その月に支払われる賞与にかかる保険料についても免除の対象となります。
2.免除制度の課題
免除制度は、免除終了の要件が「終了日の翌日が属する月の前月まで」とされており、月の末日に育児休業を取得していないとその月は免除の対象とはなりません。これにより、たとえば月中に27日間育児休業を取得したとしても、末日に育児休業を取得していないと免除を受けられないという問題がありました。一方で、賞与にかかる保険料についても、極端な例では賞与支給月の末日の1日だけ育児休業を取得していれば、その月の保険料と賞与にかかる保険料の両方が免除されるなど、制度上の公平性の問題がありました。
3.2022年10月からの変更点等
上記で見た問題のほか、本年10月より同時に施行される出生時育児休業制度や育児休業の分割取得制度により想定される短期間の育児休業の取得に対応するため、次のとおり免除制度が変更されます。
免除制度の変更点について、改正前後の内容について図表をもとに見てみましょう。
(1)月中の短期間の育児休業にかかる保険料免除
改正前は、取得期間の長さにかかわらず月の末日時点で育児休業等を取得した月について保険料が免除されるため、月中に開始・終了する短期間の育児休業等の場合、保険料は免除されません(図表①<改正前>参照)。
これに対して、改正後は、月の末日に休業した場合に免除される現行の制度に加え、末日を含まない月中に14日以上の育児休業等を取得した場合も保険料が免除されます(図表①<改正後>参照)。
【図表① 月中の短期間の育児休業にかかる保険料免除】
(2)賞与にかかる保険料免除
改正前は、月末時点で育児休業等を取得した場合、当月中に支払われる「賞与」にかかる保険料についても免除されます(図表②<改正前>参照)。
これに対して、改正後は、育児休業等の期間が1ヵ月超の場合に限って、賞与にかかる保険料が免除されます(図表②<改正後>参照)。
【図表② 賞与にかかる保険料免除】
4.おわりに
今回は、育児休業等期間中の社会保険料免除制度の変更点等について見てきました。本改正は、育児・介護休業法の改正とあわせて2022年10月から施行される予定ですが、保険料免除制度は従業員だけでなく会社にも直接的な影響があるため、改正前後の変更点についてしっかりと理解しておくことが重要です。
後編では、厚生労働省から2022年3月31日に出された『育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A』(以下「Q&A」という。)をもとに具体的な実務上の取扱いについて見ていきたいと思います。
以上
次回コラム: 「【2022年10月施行】育児休業等期間中の社会保険料免除要件の概要と実務上のポイント(後編) 」
ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)