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人事労務コラム Column

2024.02.01

法改正情報

【人事・労務関連】2024(令和6)年4月施行 主な法改正について

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

近年、労働関係諸法令に関する改正が頻繁に行われており、企業の人事・労務担当の皆さまは、社内諸制度の見直しや諸規程の改定などの対応に迫られているのではないかと思います。そこで、本コラムでは、2024(令和6)年4月施行の主な改正事項について確認するとともに、社内諸制度や諸規程の見直しが必要な事項について概要を解説したいと思います。

 

1.2024年4月施行の主な改正

2024年4月施行の主な改正事項は以下のとおりです。
※当ホームページのコラムで改正概要をより詳しく解説しているものについては、各項目から該当コラムをご覧いただくことができます。
法律 改正項目
労働基準法 無期転換に関する明示ルールの見直し
労働基準法・職業安定法 労働条件明示ルールの変更
労働基準法 裁量労働制の見直し
労働基準法 建設業・自動車運転業務・医師・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業の時間外労働規制猶予の終了
障害者雇用促進法 障害者雇用率の引上げ、短時間労働者である障害者の実雇用率への算入、特例給付金の廃止、調整金および報奨金の支給額変更
障害者差別解消法 障害者への合理的配慮の義務化
※上記のほか、労災保険料率の改定が予定されています(2024年2月1日時点)

 

2.改正事項の内容について

次に、上記1.で挙げた改正事項の内容について、それぞれの概要を見ていきたいと思います。

(1)無期転換に関する明示ルールの見直し

労働基準法では、同一の使用者(企業等)との間で通算5年を超えて有期労働契約が更新された場合、労働者が使用者に対して、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)への転換の申込みを行う権利(無期転換申込権)が発生することとされています。

改正前は、無期転換申込権が発生したことについて、労働者に通知したり、無期転換申込みの際に無期転換した場合の労働条件を明示する必要はありませんが、改正後は、有期契約の更新により無期転換申込権が発生するタイミングで、無期転換の申込みができることならびに無期転換後の労働条件について、労働者に明示することが使用者に義務づけられます。

この改正により、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに無期転換後の労働条件等の明示が必要となるため、企業の実務担当者としては、有期契約労働者の契約期間が5年を超えているか否かについて管理するとともに、明示事項に漏れがないよう注意する必要があります。無期転換申込権が発生した際にスムーズに労働条件を明示できるように、無期転換後の労働条件についてあらかじめ整理しておくとよいでしょう。

関連コラム: 【2024年4月改正】労働条件明示ルールの変更(前編)~ 無期転換に関する明示ルールの見直し ~

 

(2)労働条件明示ルールの変更

労働基準法では、労働契約の締結時に、一定の事項について労働条件を書面等で明示することが使用者に義務づけられています(労基法15条)。具体的な明示事項は労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)に定められていますが、労基則の改正により、2024年4月1日以降、明示事項が新たに追加されることになりました。

具体的には、「有期労働契約の更新上限(通算契約期間または更新回数)」および「就業場所および従事すべき業務の変更の範囲」について明示が義務づけられるとともに、有期労働契約について、最初の有期労働契約の締結より後に更新上限を新たに設けたり短縮したりする場合には、有期契約労働者にあらかじめその理由の説明が義務づけられることとされました。

今回の改正により、2024年4月1日以後に締結するすべての労働者の労働条件通知書または雇用契約書について、記載事項の追加などの見直しが必要になります。

改正後は、労働条件通知書に明示されていない場所への転勤や職種の変更を命じた場合、労働条件通知書の記載内容をめぐって労働者とトラブルになる可能性があります。このため、就業場所および業務内容の限定の有無、限定しない場合の変更の範囲、業務内容の変更の可能性等について、雇用形態(正社員・契約社員・パート社員等)別に整理したうえで、労働条件通知書等の見直しを行うことが肝要です。

また、職業安定法でも募集時等に明示すべき事項について改正が行われます。通常、求人企業・職業紹介事業者等が労働者の募集を行う場合や職業紹介を行う場合等には、募集する労働者の労働条件を明示する必要がありますが、2024年4月1日からは、従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または更新回数の上限を含む。)についても明示しなければならなくなります。

関連コラム: 【2024年4月改正】労働条件明示ルールの変更(後編)~ 労働条件の明示事項に新たな項目が追加されます ~

 

(3)裁量労働制の見直し

裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」がありますが、2024年4月より、労基則および指針等が改正され、いずれの制度についても見直しが行われます。

まず、「専門業務型裁量労働制」について、下記事項の見直しが行われます。

① 対象業務の追加
② 労使協定事項の追加
③ 記録の保存の明確化

とくにポイントとなるのは、②の労使協定事項の一つとして、「本人の同意」が必要になる点です。詳細は後述のコラムをご確認ください。

一方、「企画業務型裁量労働制」については、導入・適用時に新たに下記事項への対応が必要となります。

①同意の撤回に関する手続きの定め・撤回に関する記録の保存等
②労使委員会に対する賃金・評価制度の説明
③労使委員会の運営に関する見直し
 a)制度の実施状況の把握と運用改善
 b)労使委員会の6ヵ月以内ごとの開催
④ 定期報告の頻度の変更

このほか、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」に共通する改正事項として、健康福祉確保措置が挙げられます。健康福祉確保措置の決定にあたって、事業場の対象労働者全員を対象とする措置、個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置の中から、それぞれ一つ以上の措置を実施することが望ましいこととされています。

改正前から企画業務型裁量労働制を導入している場合で、改正後も同制度を継続させる場合には、労使委員会運営規程に必要な事項を追加するとともに、改正による決議事項を追加したうえで決議し、2024年4月1日までに決議届を所轄労働基準監督署に届け出なければならない点に注意が必要です。

また、本改正に伴って、労使委員会の決議の届出および定期報告の様式が変更されますので、注意が必要です。

関連コラム:
【2024年4月改正】裁量労働制の見直しについてわかりやすく解説(前編)~ 専門業務型裁量労働制の改正内容 ~
【2024年4月改正】裁量労働制の見直しについてわかりやすく解説(後編)~ 企画業務型裁量労働制の改正内容 ~

 

(4)建設業・自動車運転業務・医師・鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業の時間外労働上限規制猶予の終了

長時間労働の抑制を図るため、2019年4月に労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が適用されることとなりました。

一方で、長時間労働の背景が業務の特性や取引慣行の課題であった①建設業、②自動車運転業務、③医師、④鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業については、時間外労働の上限の適用が5年間猶予されていますが、2024年4月に猶予が撤廃され、時間外労働の上限が適用されることになりました(一部特例あり)。また、これに伴って協定届の様式が変更されることとなりましたので、届出の際は留意が必要です。

(5)障害者雇用率の引上げ、短時間労働者である障害者の実雇用率への算入、特例給付金の廃止、調整金および報奨金の支給額変更

2023年3月に障害者雇用促進法施行令が改正され、障害者の法定雇用率が2024年4月から段階的に引き上げられることとなりました。民間企業の法定雇用率は、2023年度は2.3%のまま据え置きとされていましたが、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%に引き上げられます。

また、あわせて障害者雇用促進法の改正が行われ、2024年4月から、とくに短い労働時間(週所定労働時間10時間以上20時間未満)で働く重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者についても実雇用率に算入できるようになります。

さらに、納付金制度の見直しが行われ、特例給付金の廃止ならびに調整金、報奨金の支給額の変更が行われます。

関連コラム: 【2024年4月改正】障害者の法定雇用率等が変わります

 

(6)障害者への合理的配慮の義務化

2021年6月に「改正障害者差別解消法」が公布され、2024年4月より施行されます。これにより、事業者による「合理的配慮の提供」は、努力義務から義務へと変更されます。

「障害者差別解消法」では、行政機関等および事業者に対し、障害のある人への障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止するとともに、障害のある人から申出があった場合に「合理的配慮の提供」を求めることなどを通じて、「共生社会」を実現することを目指しています。

この場合の「合理的配慮の提供」とは、障害のある人から事業者や行政機関等に対して、社会の中にあるバリア(障壁)を取り除くために何らかの対応が求められたときに、負担の重すぎない範囲で対応を行うこととされています。

行政機関等については従来から義務とされている一方で、民間事業者については努力義務とされていましたが、「改正障害者差別解消法」の施行に伴い、民間事業者についても合理的配慮の提供が義務づけられます。雇用の分野では、「障害者雇用促進法」によって合理的配慮の提供が義務とされていましたが、教育、医療、福祉、公共交通など、日常生活および社会生活全般にかかる分野が対象とされている「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務化されたことにより、さまざまな場面で障害者への合理的配慮の提供が求められます。このため、「不当な差別的取扱い」とならないよう、障害者と対話を重ねながらバリアの解消策を検討していくことが重要です。

3.おわりに

ここまで見てきたとおり、2024年4月は、人事・労務分野にかかる重要な法改正が集中しています。法令を順守するとともに従業員にとって働きやすい職場づくりをしていくためには、改正内容を理解したうえで、自社制度の見直しや諸規程の改定等について的確に対応していくことが求められます。

弊所では、人事・労務相談や諸規程の制改定等の業務を承っており、多くの実績・ノウハウを有しておりますので、「法改正に関しどのような対応が必要か分からない」、「社内で規程を改定できる人材がいない」などの課題を抱える企業様は、お気軽にお問い合わせください。

以上

 

 


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