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人事労務コラム Column

2024.02.01

法改正情報

【2024年4月改正施行!】時間外労働の上限規制 ~建設業への適用~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

働き方改革の一環として、改正労働基準法により、2019年4月(中小事業主は2020年4月)から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されています。

一方で、改正法の経過措置として、「工作物の建設の事業」、「自動車運転の業務」、「医業に従事する医師」、「鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業」については、これまで上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月より適用されることとされています。

そこで、今回はこれらの適用猶予事業・業務のうち、2024年4月から適用される「工作物の建設の事業」の上限規制の内容について見ていきたいと思います。

1.時間外労働の上限規制について

労働基準法の定めにより、事業主は、原則として労働時間について週40時間かつ1日8時間の法定労働時間を超えて労働させてはならず、休日について毎週少なくとも1回の法定休日を与えることとされています。法定労働時間を超えまたは法定休日に労働させる必要がある場合には、原則として、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との書面による協定(以下、三六協定という。)を締結し、所轄労働基準監督署に届出をすることによって、その協定に定める時間を上限に労働時間を延長し、または休日に労働させることができることとされています。

三六協定の締結によって延長できる労働時間数は、原則として月45時間、年360時間とされていますが、特別条項付きの三六協定を締結した場合には、年6回を限度として月100時間未満(休日労働を含む。)、年720時間以内で労働時間を延長することができることとされています。また、三六協定の特別条項の締結の有無にかかわらず、実働の時間外労働の時間数は、休日労働を含め、月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内とされています。

2.建設業の時間外労働の上限規制について

工作物における建設の事業は、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、猶予期間が終了し、2024年4月より時間外労働の上限規制が適用されることとされています。

ただし、「災害時における復旧および復興の事業」については、適用猶予終了後も「月100時間未満」、「2~6ヵ月平均で80時間以内」(いずれも休日労働含む。)の上限規制は適用されません(労働基準法第139条。詳細は図表1参照)。

この場合の「災害時における復旧および復興の事業」とは、災害により被害を受けた工作物の復旧および復興を目的として発注を受けた建設の事業をいい、工事の名称等にかかわらず、特定の災害による被害を受けた道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設などの復旧および復興の事業が対象となり、たとえば次の事業が該当します。

・公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和 26 年法律 97 号)の適用を受ける災害復旧事業(関連事業等を含む。)
・国や地方自治体と締結した災害協定(事業者団体が締結当事者である等、建設事業者が災害協定の締結当事者になっていない場合を含む。)に基づく災害の復旧の事業
・維持管理契約内で発注者(民間発注者を含む。)の指示により対応する災害の復旧の事業
・複数年にわたって行う復興の事業

 

【図表1 建設業における時間外労働の上限規制】

上限規制 2024年3月まで 2024年4月以降
三六協定の上限 原則 月45時間 適用なし 適用
年360時間
特別条項 月100時間未満
(休日労働含む)
適用
(災害の復旧・復興の
事業は適用されない)
年720時間以内 適用
実働の上限 月100時間未満
(休日労働含む)
適用
(災害の復旧・復興の
事業は適用されない)
2~6ヵ月平均
80時間以内
(休日労働含む)

 

3. 災害と時間外・休日労働について

それでは、災害と時間外・休日労働にかかる実務上の対応について見ていきましょう。

まず、2.で見たとおり、建設業のうち災害時における復旧および復興の事業については、2024年4月より時間外労働の上限規制が適用されますが、月100時間未満、2~6ヵ月平均で80時間以内(いずれも休日労働を含む。)の上限規制は適用されません(労働基準法139条。図表1参照)。

一方、災害時の時間外労働等について、災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合には、所轄労働基準監督署長の許可を受けることにより、労働時間を延長し、休日に労働させることができることとされています(労働基準法33条)。

どちらも災害と時間外・休日労働に関する定めですが、対象や手続きの方法等が異なります(図表2参照)。

【図表2 災害時の時間外労働等について】

災害時における復旧および復興の事業
(労働基準法139条)
災害時の時間外労働等
(労働基準法33条)
対象 災害時における復旧および復興の事業
建設の事業に限る
災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合
建設の事業に限らない
手続き 三六協定の締結・届出 事前の許可申請または事後の届出
上限規制 【適用】
年720時間の上限
月45時間超6ヵ月が限度
【適用なし】
・時間外労働+休日労働の合計
・月100時間未満
・2~6ヵ月平均80時間以内
適用なし
効果 三六協定で定める範囲内で
時間外・休日労働を行わせることができる
三六協定で定める限度とは別に
時間外・休日労働を行わせることができる

 

上記のとおり、建設業のうち「災害時における復旧および復興の事業」については、三六協定を締結して労働基準監督署に届出を行うことにより、協定の範囲内で時間外・休日労働を行わせることができる(労働基準法139条)のに対して、災害時の時間外労働等は、事前の許可申請または事後の届出をすることにより、三六協定で定める限度時間とは別に時間外・休日労働を行わせることができることとされています(労働基準法33条)。また、災害時の復旧・復興の事業は、一部の時間外労働の上限規制の適用があるのに対して、災害時の時間外労働等は、延長ができる労働時間数等に制限がありません。

実務上の対応として、災害時の復旧・復興の事業に従事する可能性がある事業場では、復旧および復興に要する時間を見込んだうえで三六協定を締結・届出を行い、公益・人命保護のために緊急を要する災害対応により、三六協定に定める限度時間・回数を超える時間外・休日労働が発生した場合には、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、労働時間を延長し、休日労働させることが考えられます。

4.三六協定の新様式について

2024年4月1日以降の日を起算日として締結する三六協定については、新しい書式により届出をする必要があります。なお、災害の復旧・復興の事業の有無によって届出の書式が異なりますので、留意が必要です。

【図表3 三六協定の新様式について】

1月45時間超の
時間外・休日労働
復旧・復興の対応
見込あり
復旧・復興の対応
見込なし
なし
(一般条項)
様式9号の3の2 様式9号
あり
(特別条項)
様式9号の3の3 様式9号の2

 

5.おわりに

今回は、建設業における時間外労働の上限規制について見てきました。2024年4月以降、建設業においても時間外労働の上限規制が適用されることになり、三六協定届等の様式が変更となるため留意が必要です。次回は、自動車運転の業務における時間外労働の上限規制について見ていきます。

以上

 


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