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人事労務コラム Column

2022.06.15

法改正情報

【2022年10月施行】育児休業等期間中の社会保険料免除要件の概要と実務上のポイント(後編) ~ 厚生労働省の『Q&A』をもとに実務上の具体的な取扱いを解説 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前編では、育児休業等期間中の社会保険料免除制度の変更点の概要について見てきました。後編では、厚生労働省から2022年3月31日に出された『育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A』(以下「Q&A」という。)をもとに具体的な実務上の取扱いについて見ていきたいと思います。

前回コラム: 「【2022年10月施行】育児休業等期間中の社会保険料免除要件の概要と実務上のポイント(前編)」

 

1. Q&Aの主な内容

Q&Aは、主に、次の項目について、実務上生じる疑問点に関する明確な取扱い方法を示しています。

(1)出生時育児休業や育児休業の分割取得に対応する保険料免除の具体的な取扱い
(2)賞与にかかる保険料免除の具体的な取扱い
(3)免除の申出手続き等に関する具体的な取扱い

2.Q&Aの具体的な内容

では、Q&Aの内容のうち、実務において影響が大きいものについて、1.に示した項目順に詳細を見ていきましょう。なお、Q&Aの内容は、一見して趣旨が分かるよう題名を付し、原文を一部修正のうえ簡潔な内容にまとめています。

(1)出生時育児休業や育児休業の分割取得に対応する保険料免除の具体的な取扱い

 
① 月中の14日以上の免除要件について(Q&A 問7)

Q.  前月以前から育児休業を取得しており、最終月について月末まで育児休業等を取得していないが、14日以上の育児休業を取得している場合、最終月の保険料は免除されるか。
A.  最終月の保険料は免除されない。

⇒ 月中の14日以上の免除要件によって免除の対象となる育児休業等は、同一の月に開始日と終了日の翌日が属するものに限定されています。したがって、前月以前から続く育児休業等によって最終月に14日以上あった場合でも、開始日と終了日の月が異なるため、最終月は、14日以上の免除要件には該当せず、保険料は免除されません。

 
② 月中の14日以上の免除要件の日数判定について(Q&A 問8)

Q.  出生時育児休業期間中の就業日数は14日以上の免除要件の判定の際、育児休業等日数にカウントするのか。
A.  14日以上の免除要件の判定の際、当該就業日数はカウントしない。

⇒ 出生時育児休業については、育児・介護休業法9条の5の規定に基づいて労使間で合意した範囲内で就業する日(就業日数)を設定することが可能です。この就業日数については、14日以上の免除要件の判定の際、育児休業等日数から除いて日数を算定します。

 
③ 同一の月に開始日と終了日の翌日が属する育児休業等が複数ある場合の取扱い(Q&A 問8続き)

Q.  同一の月に開始日と終了日の翌日が属する育児休業等が複数ある場合、日数は合算できるか。
A.   合算して算定する。

⇒ 同一の月に開始日と終了日の翌日が属する育児休業等が複数ある場合、それらの 育児休業等日数を合算して14日以上であれば、月中の14日以上の免除要件に該当し、当該月の保険料は免除されます。

 
④ 同一の月に複数の育児休業取得した場合の取扱い(Q&A 問9)

Q.  同一の月に複数の育児休業を取得した場合の育児休業等日数の合算について、前月以前から続く育児休業等日数についても対象となるか。
A.   合算の対象とはならない。

⇒ 月中の14日以上の免除要件の判定に際し合算対象となるのは、開始日と終了日の翌日が同一の月に属する育児休業等に限定されます。したがって、前月以前から続く育児休業等については合算しません。

 
⑤ 育児休業期間中の休日の取扱い(Q&A 問10)

Q.  育児休業等期間中に休日がある場合、育児休業等日数の算定にあたり、この休日は含めるのか。
A.   休日も育児休業等日数に含む。

⇒ 育児休業等日数とは、育児休業等の開始日から終了予定日までの暦日数(出生時育児休業期間中の就業日数は除く。)をいいます。したがって、育児休業期間中に土日等の休日や有給休暇など労務に服さない日が含まれている場合でも、育児休業等日数の算定にあたり差し引く必要はありません。

 
⑥ 就業日数について、時間単位の就業の取扱い(Q&A 問11)

Q.  出生時育児休業の期間中において、時間単位で就業する日がある場合、育児休業等日数の算定にあたってどのように取り扱うのか。
A.   就業時間数を1日の所定労働時間で除した数を就業日数とする。

⇒ 時間単位で就業した時間数を集計し、その結果を1日の所定労働時間数で除した数(1時間未満の端数は切捨て)を就業日数として、育児休業等日数から差し引きます。

 

(例)就業日数が時間単位の場合
・休業申請期間 :2022.10.1~2022.10.28 28日間
・就業時間数  :40時間(a)
・所定労働時間 :1日7時間(b)
・休業日数の算出:(a)÷(b)= 40÷7 = 5.7814・・・(切捨てにより5日)
・育児休業等日数:28日-5日=23日
 
⑦ 複数の出生時育児休業中の就業日数の取扱い(Q&A 問12)

Q.  同一の月に複数の出生時育児休業を取得し、それぞれに就業日数が設定されている場合、育児休業等日数はどのように算定するのか。
A.  それぞれで就業日数を控除のうえ育児休業等日数を算定し、合計する。

⇒ それぞれで出生時育児休業の歴日数から就業日数を控除のうえ育児休業等日数を算定し、それらを合計します。

 
⑧ 一時的・臨時的に就労した場合の育児休業等日数の取扱い(Q&A 問13)

Q.  一時的・臨時的(災害や突発的な事態への対応等、あらかじめ予定していない場合)に、就労した日ついて育児休業等日数には含めるのか。
A.   一時的・臨時的な就労は、限定的な状況であることから育児休業等日数から除く必要はない(含める)。

⇒ 育児休業期間中の就業については、出生時育児休業における労使間で合意した範囲内での就業を除き、原則として想定されていません。ただし、設問にあるような一時的・臨時的(災害や突発的な事態への対応等、あらかじめ予定していない場合)に、就労することは認められています。こうした一時的・臨時的な就業は、限定的な状況であると考えられることから、育児休業等日数の算定から除く必要はありません。

 

(2)賞与にかかる保険料免除の具体的な取扱い

 
① 賞与にかかる保険料免除の要件と対象月について(Q&A問14)

Q.  賞与にかかる保険料が免除となる要件である連続して「1ヵ月超」の育児休業等の期間とは、1ヵ月を何日として取り扱うのか。また、対象となるのはどの月に支給された賞与か。
A.  1ヵ月を暦によって計算する。
また、育児休業等期間に月の末日が含まれる月が免除の対象月とされ、その月に支払われた賞与にかかる保険料が免除の対象となる。

⇒ 賞与保険料の免除要件である「1ヵ月超」の育児休業等の期間の算定は、暦によって計算します。したがって、次の例ように取り扱います。

 

(例)
・期間① :11月16日~12月15日←ちょうど1ヵ月であり免除対象外
・期間② :11月16日~12月16日←1ヵ月+1日あるため免除対象

⇒ また、育児休業等期間が月をまたぐ場合等において、どの月に支払われた賞与の保険料が免除対象となるか疑問が生じます。この場合、従来どおり月末時点で育児休業を取得しているかどうかにより判断するため、育児休業等期間に月の末日が含まれる月に支払われた賞与にかかる保険料が免除の対象となります。

 
② 出生時育児休業における就業日数や一時的・臨時的就業に関する取扱い(Q&A 問16)

Q.  賞与保険料の免除の基準となる「1ヵ月超」の判定に際し、出生時育児休業の就業日数、もしくは一時的・臨時的にした就労日は、育児休業等日数に含まれるのか。
A.  どちらも育児休業等日数に含んで算定する。

⇒ 賞与保険料の免除要件となる「1ヵ月超」については、暦日で判定することとされており、出生時育児休業の就業日数および一時的・臨時的にした就労日をいずれも除かずに判断します。

なお、前述した月中の14日以上の判定では、出生時育児休業の就業日数は除いて算定します。賞与保険料における取扱いとは異なるため注意が必要です。

③ 複数の育児休業の開始と終了日について(Q&A問17)

Q.  2つ以上の育児休業を連続して取得する場合は、育児休業期間を合算するのか。
A.  連続した複数の育児休業は育児休業期間を合算する。

⇒ 連続した2つ以上の育児休業は、最初の育児休業開始日から最後の育児休業終了日を通算します。

 
④ 休日を挟んだ複数の育児休業について(Q&A問18)

Q.  休日を挟んで複数の育児休業を取得した場合は、連続する育児休業に該当しないのか。
A.   連続した育児休業に該当する。

⇒ 土日等の休日や年次有給休暇等、労務に服さない日を挟んで育児休業を分割取得した場合、実質的に連続して育児休業を取得しているものとして、1つの育児休業とみなされます。

 

(3)免除の申出手続き等に関する具体的な取扱い

 
① 届出の提出期限について(Q&A 問19)

Q.  育児休業等取得にかかる保険料免除の申出書の保険者への提出は、育児休業終了後でも可能か。
A.  育児休業終了後1ヵ月以内であれば、提出可能(理由書がなくとも保険者が受け付けてくれる)。

⇒ 従来は、やむを得ない理由がある場合を除き、育児休業等期間中に申出書を提出する必要がありました。2022年10月以降は短期間の育児休業の取得等に対応するため、育児休業等の終了日から起算して暦による計算で1ヵ月以内であれば理由書等の添付がなくとも、提出が認められることになります。なお、1ヵ月経過後の提出については、理由書(必要な補完資料を添付)の提出が求められます。

 
② 届出の提出期限について(Q&A 問21)

Q.  保険料免除の基準に該当しない育児休業等について、保険料免除の申出書を保険者に提出する必要があるか。
A.   提出の必要はない。

⇒ 保険料免除の基準に該当しない育児休業等について、保険料免除の申出書を保険者に提出する必要はありません。なお、同一の月に複数の育児休業等の日数を合算することにより免除基準に該当することとなった場合は、該当した時点で保険者に申出書を提出します。

 
③ 複数回の育児休業を取得した場合の届出について(Q&A 問22)

Q.  複数回の育児休業等を取得する場合、申出書をまとめて提出することは可能か。
A.   原則、育児休業等の申出書は、取得する育児休業ごとに提出する。
ただし、育児休業等の開始日と終了日が同じ月に属する複数の育児休業等が、合算して14日以上の場合は申出書をまとめて提出する。

⇒ 複数の育児休業等を合算して14日以上の場合は1枚の申出書でまとめて提出します。この場合、それぞれの育児休業等開始年月日、終了年月日、育児休業等取得日数、および就業日数を記載します。

 
④ 制度移行時の経過措置について(Q&A 問23)

Q.  新制度が適用されるのは、施行日以降の育児休業についてか。また、前月以前から施行日以降も引き続き取得している育児休業については対象となるか。
A.  新制度は、施行日以後に開始した育児休業等について適用される。

⇒ 新制度は、施行日以後に開始した育児休業等について適用されます。したがって、設問にある「前月以前から施行日以降も引き続き取得している育児休業」は、施行日前に開始したものであり、従前(改正前)の制度が適用されます。

また、次の例のように施行日前後で連続した2つの育児休業等があり、合わせると1ヵ月超になる場合であっても、育児休業(a)は従前の制度が適用されるため、育児休業(b)のみでは1ヵ月超の要件を満たさず、10月の賞与保険料は免除されません。

 

(例)
・育児休業等(a) :2022.9.15~2022.10.10
・育児休業等(b) :2022.10.11~2022.10.31

 

3.おわりに

今回は、2022年10月から変更される社会保険料免除にかかる実務上の取扱いについて、Q&Aをもとに詳細な内容を見てきました。実務上の手続きは、従来よりもかなり煩雑になることが予想されます。手続き漏れ等が発生しないよう、新制度の内容についてよく理解したうえで実務を行うことが肝要です。

以上

 

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

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