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人事労務コラム Column

2022.07.01

法改正情報

【2022年10月施行】出生時育児休業の概要と実務上のポイント(前編) ~出生時育児休業制度創設の背景と概要~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

改正育児・介護休業法(以下「改正法」という。)が2022年4月より段階的に施行されていますが、本年10月1日には、いよいよこの改正法で最も注目されている「出生時育児休業制度」が施行されます。

そこで2回にわたって、「出生時育児休業制度」創設の背景と概要、実務上の留意点等について見ていきたいと思います。

1.出生時育児休業制度創設の背景

近年、深刻さを増すわが国の少子化の状況を受け、政府は2020年5月に「少子化社会対策大綱」を閣議決定し、その重要課題の一つとして「男性の家事・育児参画の促進」を掲げました。男性の育児休業取得率は近年上昇傾向にはあるものの、2020年度で12.65%と未だ低い水準に留まっています。「少子化社会対策大綱」では、この男性の育児休業取得率について2025年に30%とすることを目標としています。

この目標を達成するため、育児・介護休業法が改正されることとなり、その一つとして主に男性が取得することを想定した「出生時育児休業制度」が創設されました。

2. 出生時育児休業の概要

出生時育児休業は、子の出生後8週間以内に4週間まで休業を取得できる制度です。今回の改正により、男性の育児休業取得促進を目的として創設されました。では、この制度の概要を見ていきましょう。

(1)対象労働者

出生時育児休業の対象者は、原則として出生後8週間以内の子を養育する産後休業をしていない労働者(日々雇用される者を除く。)とされています。出生後8週間以内の期間については、出産した女性は産後期間中であるため、主に男性が取得する休業といえます(養子縁組等の場合は女性も取得可)。ただし、有期雇用労働者については、申出時点において「子の出生の日(出産予定日前に出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から6ヵ月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでない者」に限られます。また、以下の労働者については、労使協定を締結した場合に対象外とすることができることとされています。

継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
申出日から起算して8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

 

(2)対象期間と休業期間

出生時育児休業の対象となる期間(以下「対象期間」という。)は、原則として子の出生後8週間以内の期間です。この対象期間のうち、休業できるのは4週間(28日)以内の期間です。

なお、現行法においても、子の出生後8週間以内に取得した育児休業を1回の申出にカウントしない、いわゆる「パパ休暇」といわれる制度がありますが、出生時育児休業の創設に伴ってパパ休暇は廃止されます。

(3)休業回数

出生時育児休業は、対象期間内において事由を問わず分割して2回までの取得が可能です。ただし、分割して取得する場合、2回分をまとめて申し出る必要があります。このため、1回目の申出の後に新たに申出があった場合、事業主は後からなされた申出を拒むことができます。

(4)申出期限

労働者が希望どおりの日から休業を開始するためには、原則として出生時育児休業を開始しようとする日の2週間前までに申し出ることが必要となります。ただし、労使協定を締結したうえで、以下の①~③のすべての措置を講じた場合は、申出期限を2週間超から1ヵ月以内の範囲で定める日とすることができます。

以下の雇用環境整備のための措置のうち、2つ以上の措置を講じること
a) 自社の労働者に対する育児休業に関する研修の実施
b) 育児休業に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
c) 自社の労働者の育児休業取得事例の収集および該当事例の提供
d) 自社の労働者への育児休業制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
e) 育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分または人員の配置に係る必要な措置
育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること
育児休業申出にかかる当該労働者の意向を確認するための措置を講じたうえで、その意向を把握するための取組みを行うこと

 

また、労働者の申出がこれらの期限より遅れた場合、事業主は、労働者が申し出た開始予定日から、申出があった日の翌日から起算して2週間(労使協定で申出期限を定めた場合はその期限、特別な事情がある場合は1週間)を経過する日までの間で休業を開始する日を指定することが可能です。

(5)休業期間の終了

出生時育児休業は、以下のいずれかに該当した場合、労働者の意思にかかわらず終了します。

子の死亡等により当該子を養育しないこととなった場合(養育しないこととなった事情が生じた日で終了)
子の出生日の翌日または出産予定日の翌日のいずれか遅い方から8週間を経過した場合(8週間を経過した日で終了)
子の出生日(出産予定日後に出生した場合は、出産予定日)以後に出生時育児休業の日数が28日に達した場合(28日に達した日で終了)
出生時育児休業をしている労働者について産前・産後休業、育児休業、介護休業または新たな出生時育児休業が始まった場合(各休業が始まった日の前日で終了)

 

また、出生時育児休業の開始前に子を養育しないこととなった場合には、出生時育児休業の申出はなされなかったものとみなされます。

(6)開始予定日・終了予定日の変更

出産予定日よりも早く子が出生した場合や配偶者の死亡、病気、負傷等の事情がある場合は、休業1回につき1回に限り出生時育児休業の開始予定日を繰上げ変更することができます。この場合、希望どおりの日に繰上げ変更するためには、変更後の休業開始日の1週間前までに変更の申出をする必要があります。

また、事由を問わず、休業1回につき1回に限り出生時育児休業の終了予定日の繰下げ変更が可能です。終了予定日の繰下げを希望する場合は、当初の終了予定日の2週間前までに変更の申出を行う必要があります。

(7)休業の撤回

出生時育児休業開始日の前日までは、労働者は休業の申出を撤回することが可能です。この場合、撤回した申出の休業は取得したものとみなされます。このため、申出を1回撤回した場合、撤回した休業は取得したものとみなされ、再度の申出はできませんが、出生時育児休業は2回取得することが可能であるため、2回目の取得の申出は可能です。

(8)休業期間中の就業

出生時育児休業期間中は就業を可能とすることについて労使協定を締結した場合に限って、一定の範囲内で就業させることが可能とされています。就業可能な一定の範囲は以下のとおりです。

就業日の合計日数が、出生時育児休業期間の所定労働日数の2分の1以下(1日未満の端数切り捨て)
就業日の労働時間の合計が、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の2分の1以下
休業開始予定日または休業終了予定日を就業日とする場合は、労働時間数が当該日の所定労働時間数未満

 

出生時育児休業中に就業を可能とした場合の申出手続きの流れは下記のとおりです。

① 就業希望日の申出(労働者)

労働者は休業開始日前日までに就業可能日や就業が可能な時間帯、就業の場所等の労働条件について、事業主に申し出る必要があります。

② 就業日の提示(事業主)

労働者から申出がなされた場合、事業主は就業可能日のうち就業させることを希望する日と就業時間帯、その他の労働条件を労働者に速やかに提示しなければなりません。

③ 同意(労働者)

労働者が、②で事業主が提示した就業日等に同意した場合のみ、休業中の就業が可能となります。

④ 就業日の通知(事業主)

③の同意を得た場合、事業主は同意を得た旨と就業させることとなった就業日等を労働者に通知しなければなりません。

労働者は就業日等の同意をした後であっても、休業開始予定日前日までであれば同意の全部または一部を撤回することができます。ただし、休業開始日以降の場合は、配偶者の死亡等特別な事情がある場合に限られます。

なお、①~③の手続きは、原則として書面で行う必要があります。ただし、事業主への申出等については事業主が適当と認める場合、労働者に対する通知等については労働者が希望する場合に限り、ファックスまたは電子メール等により行うことが可能です。

3.おわりに

出生時育児休業は、申出期限を早める場合や就業を認める場合などは、労使協定の締結が必要であり、また、就業を認める場合の社内様式の作成、育児・介護休業規程等の改定、従業員への制度の周知など多くの対応が必要となることから、早めに準備を進めておく必要があります。

次回は、出生時育児休業に関する社会保険制度の改正とその他実務上の対応について見ていきたいと思います。

以上

 

次回コラム: 「【2022年10月施行】出生時育児休業の概要と実務上のポイント(後編) 」

 

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