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人事労務コラム Column

2023.04.01

法改正情報

【採用担当必見】2023年度からここが変わる!インターンで取得した学生情報の取扱い

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

大学生等の学生に対して企業が行うインターンシップについては、従来、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(以下「3省合意」という。)において、早期のインターンシップで得た情報を企業の広報活動や採用活動に使用することはできないこととされていましたが、この3省合意が2022年6月に改正され、インターンシップの定義が明確化されるとともに、早期のインターンシップで企業が得た学生情報を広報活動や採用選考活動に使用できるようになりました。改正による取扱いが適用されるのは、2025年3月に卒業・修了予定の学生が2023年度に参加するインターンシップからです。

今回は、インターンシップで取得した学生情報の取扱いについて、改正によってどのように変更されたのかについて見ていきたいと思います。

関連コラム: 【人事・労務関連】2023(令和5)年4月施行 主な法改正について

 

1.企業の採用活動とインターンシップ

学生の就職・採用活動の日程に関しては、毎年度、政府の「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」において、当該年度の大学2年次に属する学生にかかる「就職・採用活動日程に関する考え方」をとりまとめ、企業に対して遵守等を要請しています。これによれば、2025年3月に卒業・修了予定の学生の就職・採用活動日程は、次のとおりとなっています。

【就職・採用活動日程】

広報活動*1開始 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
採用選考活動*2開始 卒業・修了年度の 6月1日以降
正式な内定日 卒業・修了年度の10月1日以降
*1 広報活動:採用を目的とした情報を学生に対して発信する活動。採用のための実質的な選考とならない活動
*2 採用選考活動:採用のための実質的な選考を行う活動。採用のために参加が必須となる活動

 

改正前は、「広報活動開始」より前(大学3学年次の2月末まで)に実施されたインターンシップで取得した学生情報については、広報活動、採用選考活動に使用することができないこととされていましたが、今回の改正により、一定の要件に該当するインターンシップで得た学生の情報は、広報活動ならびに採用選考活動に使用できることとされました。

2.インターンシップの定義

まずは、新たなインターンシップの定義について見ていきましょう。改正後の3省合意では、経団連※1と大学関係団体等の代表者により構成される産学協議会※2の報告書※3を踏まえ、インターンシップを含む学生のキャリア形成支援にかかる取組みについて、タイプ1からタイプ4までの4類型に分類し、タイプ3とタイプ4がインターンシップと定義されています(図表1)。

※1 一般社団法人日本経済団体連合会
※2 採用と大学教育の未来に関する産学協議会
※3 2021 年度報告書「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」

 

【図表1 学生のキャリア形成支援にかかる取組みの類型】

類型 取組みの性質 主な特徴
タイプ1
オープンカンパニー
個社・業界の情報提供・PR ・企業等が主催するイベント・説明会等
・参加期間は単日、就業体験はなし
・実施時期は学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)
タイプ2
キャリア教育
教育 ・企業がCSRとして実施するプログラム、大学が主導する授業・産学協働プログラム等
・就業体験は任意
・実施時期は学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)
タイプ3
汎用的能力・専門活用型
インターンシップ
・就業体験
・自らの能力の見極め
・評価材料の取得
・企業単独または大学が企業等と連携して実施する適正・汎用的能力・専門性を重視したプログラム等
参加期間は汎用的能力活用型は5日間以上、専門活用型は2週間以上
就業体験は必須(参加期間の半数を超える日数が必要)
・実施場所は職場。
実施時期は、学部3年、4年ないし修士1年、2年の長期休暇期間(大学正課および博士課程は時期の限定なし)
・原則として無給。実態として従業員と同じ業務をする場合は労働関係法令が適用され、有給
・就業体験では、職場の社員が学生を指導し、フィードバックを行う
募集要項において必要な情報開示を行う
タイプ4(試行)
高度専門型
インターンシップ
・就業体験
・実践力の向上
・評価材料の取得
・ジョブ型研究インターンシップ等
就業体験は必須

 

3.インターンシップで得た学生情報の使用

次に、学生情報の使用について詳しく見ていきましょう。改正後の3省合意では、2023年度以降、タイプ3のインターンシップで入手したものに限り、広報活動や採用選考活動に使用できることとなりました。

改正前後の取扱いの違いは、以下の図表のとおりです(図表2)。

【図表2 改正前後のインターンシップで取得した学生情報の取扱い】

学生情報を取得した
インターンシップの開始時期
取扱い
原則
(変更なし)
あらかじめ広報活動・採用選考活動の趣旨を
含むことが明示された場合
改正前 改正後
①卒業・修了前年次2月末まで
(広報活動開始時期前)
広報活動・採用選考活動に使用できない 使用できない。 タイプ3に限り、3月以降は広報活動に、6月以降は採用選考活動に使用できる。
②卒業・修了前年次3月~卒業・修了年次5月末まで
(広報活動開始時期後かつ採用選考活動開始時期前)
広報活動に使用できる。 広報活動に使用できる。
タイプ3に限り、6月以降は採用選考活動に使用できる。
③卒業・修了年次6月以降
(採用選考活動開始時期後)
採用選考活動に使用できる。 使用できる。

※ 3省合意別紙2を加工して作成
 

図表にあるとおり、あらかじめインターンシップが広報活動・採用選考活動の趣旨を含むことが明示されていれば、卒業・修了前年(大学の場合は3学年・大学院の場合は1学年)次までに実施するインターンシップ(タイプ3に限る)で得た学生情報を広報活動・採用選考活動に使用できることとなりました(図表2①)。

また、卒業・修了前年(大学の場合は3学年・大学院の場合は1学年)次3月~卒業・修了年(同4学年・同2学年)次5月末までに実施するインターンシップで得た情報について、改正前は広報活動のみに使用できることとされていましたが、改正後はタイプ3に限って6月以降採用選考活動に使用できることとされました。

タイプ3のインターンシップは、以下の5つの要件すべてを満たしていることが必要です。

【タイプ3のインターンシップの要件】

①就業体験要件 必ず就業体験を行い、実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる。
②指導要件 就業体験において、職場の社員が学生を指導し、終了後に学生に対してフィードバックを行う。
③実施期間要件 汎用的能力活用型では5日間以上、専門能力活用型では2週間以上の期間とする。
④実施時期要件 学部3年・4年ないし修士1年・2年の長期休暇期間に実施する。
⑤情報開示要件 募集要項等に、プログラムの趣旨、実施時期、就業体験の内容等の必要事項を記載し、HP等で公表する。

 

なお、タイプ1~4は、あくまでもキャリア形成支援の取組みであって、採用活動ではないため、学生は、採用選考活動開始時期以降、あらためて採用選考のためのエントリーが必要です。

4.おわりに

今回の改正により、インターンシップで得た学生情報を活用できるようになるなど、企業にとって採用活動に有効活用できる機会が増えたといえます。インターンシップは、学生が自身の適性や能力等を見極める機会ですが、企業にとっても自社の魅力・良さ・仕事のやりがい等を学生に伝えることができる機会です。今回の改正をきっかけにインターンシップの導入について検討してみてはいかがでしょうか。

以上

 

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