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人事労務コラム Column

2025.07.15

法改正情報

【2025年6月成立】改正女性活躍推進法の概要と「えるぼし」認定について ~えるぼし認定制度の概要と認定基準の改正~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

本年の国会で成立し、6月11日に公布された「労働施策総合推進法等を改正する法律」※1により女性活躍推進法が改正され、2026年4月1日以降順次施行されます(一部は公布日に施行済み)。前回は情報公表項目の拡大等について見ましたが、今回は、えるぼし認定制度の概要と認定基準の改正について解説します。

※1 正式には、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」という。

 

▽前回コラムをチェックする▽
【2025年6月成立】改正女性活躍推進法の概要と「えるぼし」認定について ~情報公表義務が拡大されます~

 

1.えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは

女性活躍推進法では、女性活躍推進に関する行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取組みの実施状況が優良な企業を認定する制度(通称「えるぼし認定」)が設けられています。えるぼし認定には1段階目から3段階目まであり、それぞれの段階に認定基準が設けられています。

また、えるぼし認定のほか、女性活躍に関する取組みの実施状況がとくに優良な企業に対する「プラチナえるぼし認定」があり、えるぼし認定よりさらに高い認定基準が設けられています。今回の改正法では、「プラチナえるぼし認定基準」が改正されました。改正内容は3.(2)で解説します。

2.えるぼし認定・プラチナえるぼし認定を受けるメリット

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定を受けると、認定マーク(図表1)を商品、広告、自社のホームページ、名刺、求人票などに付し、求職者や顧客に向けて認定を受けた事業主であることをアピールすることで、優秀な人材の確保や企業イメージの向上などにつながることが期待できます。また、各府省等公共調達(総合評価落札方式または企画競争による調達)を実施する場合は段階に応じて加点評価される優遇措置が講じられます。そのほか、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を通常よりも低金利で利用できるなど、有利な条件で融資を受けることができるなどのメリットもあります。


【図表1】えるぼし認定・プラチナえるぼし認定マーク

3.えるぼし・プラチナえるぼし認定基準

企業がえるぼし・プラチナえるぼし認定を受けるためには、一定の認定基準を満たす必要があります。

(1)えるぼし認定基準

えるぼしの認定基準には、すべての段階において必ず満たさなければならない「基本的な項目」と、3段階のうちどの段階であるかを評価するための「評価項目」があります。「基本的な項目」の内容は次のとおりです。

【図表2】えるぼし認定基準にかかる基本的な項目

① 事業主行動計画策定指針に即して適切な一般事業主行動計画を定めたこと

② 策定した一般事業主行動計画について、適切に労働者への周知および外部公表をしたこと

③ 次のいずれにも該当しないこと

ⅰ)認定取消または辞退から3年を経過していないこと

ⅱ)労働関係法令の違反に関して法律に基づく処分、公表等の措置が講じられたこと

ⅲ)女性活躍推進法その他関係法令に違反する重大な事実があること

 

一方、「評価項目」には、「採用」、「継続就業」、「労働時間等の働き方」、「管理職比率」、「多様なキャリアコース」の5項目があり、主に「採用」については男女別の競争倍率について、「継続就業」については男女の平均勤続年数の差異、「労働時間等の働き方」については時間外労働と休日労働の各月ごとの平均時間数、「管理職比率」については女性管理職の割合について、それぞれ認定のための詳細な基準が設けられています。

えるぼし認定の段階(1段階目から3段階目)は、「基本的な項目」をすべて満たした上で、5種類ある「評価項目」のうち基準を満たした項目がいくつあるかで決まります。認定段階ごとの要件をまとめたのが図表3です。

【図表3】 えるぼし認定の段階と基準

(2)プラチナえるぼし認定基準

プラチナえるぼし認定については、えるぼし認定を受けていることが前提となります。認定にあたっては、一般事業主行動計画の目標達成のほか、男女雇用機会均等推進者および職業家庭両立推進者の選任、8項目以上の情報公表、評価項目5項目すべての基準を満たすことなどが要件となっています。なお、評価項目5項目については、一部えるぼし認定より高い基準が定められています。

今回の女性活躍推進法の改正では、プラチナえるぼし認定要件として「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止にかかる措置の内容を公表していること」が追加されることになります。なお、今回の改正法には男女雇用機会均等法の改正も含まれており、本改正の施行と同時期に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置を講じることが事業主に義務づけられる予定です。改正法の施行時期は、公布日(2025年6月11日)から起算して1年6ヵ月以内の政令で定める日とされています。プラチナえるぼし認定基準についてまとめたのが図表4です。

【図表4】 プラチナえるぼし認定の基準

4.おわりに

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定は、女性活躍への取組みが優良な会社に対する認定ですが、認定基準に長時間労働がないことなどが含まれており、認定を受けている企業は女性だけでなく男性にとっても働きやすい企業といえます。

近年、人材の確保が難しくなる中、とくに求職者に対するアピールとなる点は大きなメリットといえるでしょう。

以上

 


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