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人事労務コラム Column

2022.02.01

法改正情報

2022年4月から適用事業主拡大! 改正女性活躍推進法

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

改正女性活躍推進法(以下、「改正法」という。)により、2022年4月1日から、一般事業主行動計画の策定義務等の対象企業が、従来の労働者数「301人以上」の事業主から「101人以上」の事業主に拡大されます。

この改正により、中小企業においても、改正法施行日までに一般事業主行動計画の策定等が必要となります。そこで、今回は、女性活躍推進法の概要と改正女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定等のポイントについて見ていきたいと思います。

 

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・改正概要および一般事業主行動計画の策定方法等について

 

1.女性活躍推進法の概要

女性活躍推進法(以下、「法」という。)は、女性の職業生活における活躍を推進して、豊かで活力ある社会を実現することを目的として、2016年4月1日から2026年3月31日まで10年間の時限立法として制定されました。この法では、企業に以下の2点を義務づけています。

女性の活躍を推進するための一般事業主行動計画の策定等
自社の女性の活躍に関する情報公表

 

改正前は、①、②の義務は、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主に義務づけられていました(300人以下は努力義務)が、改正法の施行により、常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主に新たに義務づけられることとなります。以下では、法が定める一般事業主行動計画の策定等および女性の活躍に関する情報公表をどのように行うかについて見ていきます。

 

2.一般事業主行動計画の策定等

一般事業主行動計画(以下、「行動計画」という。)は、自社の女性の活躍に関する状況把握や課題分析の結果をふまえて策定することとされており、都道府県労働局長への届出および外部への公表が義務づけられています。行動計画の策定等の具体的なステップは、以下のとおりです。

 

【行動計画の策定・届出の具体的なステップ】

ステップ1  自社の女性の活躍状況に関する状況の把握・課題分析
ステップ2  一般事業主行動計画の策定
ステップ3  社内周知と外部公表の実施、都道府県労働局への届出

 

では、各ステップの内容について、詳しく見ていきましょう。

 

(1)ステップ1 自社の女性の活躍状況に関する状況把握・課題分析

行動計画の策定にあたっては、自社の女性の活躍に関する状況について、直近の事業年度のデータを把握(状況把握)して課題を分析(課題分析)し、その結果を勘案して、行動計画を定めなければならないとされています。状況把握においては、必ず把握しなければならないデータとして「基礎項目」が定められています。

 

【状況把握が必要な基礎項目】

採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用管理区分ごと)
男女の平均継続勤務年数の差異(雇用管理区分ごと)
労働者の各月ごとの平均残業時間数などの労働時間の状況
管理職(課長級、課長級より上位の役職(役員除く))に占める女性労働者の割合

 

①②の雇用管理区分とは、職種、資格、雇用形態、就業形態などの労働者の区分であって、それぞれ異なる雇用管理を行っているものをいいます。

  職種による区分例:総合職、エリア総合職、一般職
  職務による区分例:事務職、技術職、専門職、現業職
  雇用形態による区分例:正社員、契約社員、パートタイム労働者など

①、②については、上記のような異なる雇用管理区分ごとに数値を把握して課題を分析する必要があります。

 

(2)ステップ2 行動計画の策定

ステップ2は行動計画の策定です。行動計画の策定は、ステップ1の状況把握・課題分析をふまえた内容とする必要があります。行動計画には、以下の3つの事項を定めなければなりません。

 

【行動計画に定める事項】

計画期間
数値目標
取組み内容・取組みの実施時期

 

① 計画期間

計画期間は○年以上、○年以下といった定めはありませんので、計画期間内に数値目標の達成を目指すことを念頭に、企業の実情に応じて定めることが重要とされています。

 
② 数値目標

数値目標とは、実数、割合、倍数など数値を用いた目標のことです。数値目標の設定については、ステップ1の状況把握・課題分析の結果、各企業にとって課題であると考えられるものから優先的に数値目標の設定を行うことが考えられますが、できる限り積極的に複数の課題に対応する数値目標の設定を行うことが効果的とされています(事業主行動計画策定指針)。

 
③ 取組み内容・取組みの実施時期

行動計画には、数値目標の達成のために必要な取組み内容および取組みの実施時期についても定める必要があります。

なお、行動計画の策定の際の留意点として、行動計画の内容が男女雇用機会均等法に違反しないようにしなければなりません。たとえば、採用において女性労働者を男性労働者に比べて優先的に取り扱う取組みについては、雇用管理区分ごとにみて女性が4割を下回っている場合などに限られていますので注意が必要です。

 

(3)ステップ3 行動計画の社内周知と外部公表の実施、都道府県労働局への届出

行動計画の策定後は、社内周知と外部公表を行ったうえで都道府県労働局への届出が必要です。

 
① 行動計画の社内周知

社内周知とは労働者に周知することであり、行動計画の策定後、非正規労働者を含めたすべての労働者に周知する必要があります。周知の方法は、事業所の見やすい場所への掲示やイントラネットへの掲載、電子メールでの送付、書面での配布などにより行うこととされています。

 
② 行動計画の外部への公表

外部への公表とは、社外に向けて行動計画を公表することです。外部への公表の方法は、原則として、自社のホームページへの掲載、厚生労働省のウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」への掲載のいずれかで行うこととされています。

 
③ 都道府県労働局に届出

策定した行動計画は、会社の所在地を管轄する都道府県労働局に届け出ることが必要です。この場合、所定の様式(一般事業主行動計画策定・変更届)を提出することとされています。

 

3.女性の活躍に関する情報公表

自社の女性労働者の活躍状況について、下記の項目の中から1項目以上選択して、求職者などが閲覧できるように情報公表することが義務づけられます。なお、301人以上の企業については、①と②の区分からそれぞれ1項目ずつ、合計2項目以上の公表が必要です。

女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
  ・ 採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
・ 男女別の採用における競争倍率(区)
・ 労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
・ 係長級にある者に占める女性の割合
・ 管理職に占める女性の割合
・ 役員に占める女性の割合
・ 男女別の職種または雇用形態の転換実績(区)(派)
・ 男女別の再雇用または中途採用の実績
  ・ 男女の平均勤続勤務年数の差異
・ 10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・ 男女別の育児休業取得率(区)
・ 労働者の1ヵ月あたりの平均残業時間
・ 労働者の1ヵ月あたりの平均残業時間(区)(派)
・ 有給休暇取得率
・ 有給休暇取得率(区)

※(区)雇用管理区分ごと、(派)派遣労働者も含めて公表が必要です。

 

また、上記の項目とは別に、自社の活躍状況の外部に向けてのアピールとして、以下の項目について企業の任意で公表が可能です。

  女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に資する社内制度の概要
    (職種や雇用形態の転換制度、正社員としての再雇用または中途採用制度等)
  労働者の職業生活と家庭生活の両立に資する社内制度の概要
    (育児・介護に関する法律を上回る制度、フレックスタイム、在宅勤務等の柔軟な働き方に資する制度、病気・不妊治療等のための休暇制度等)

 

4.おわりに

今回は、改正女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出に関する実務的なポイントについて見てきました。新たに義務化の対象となる企業は、改正法施行日の4月1日には、行動計画の策定等および情報公表を行う必要があります。これらの準備が終わっていない場合は、早めに取り組むことが必要です。

以上

 

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