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人事労務コラム Column

2022.12.05

特集

【基礎から解説!】最低賃金とはなにか?(後編) ~減額特例、派遣労働者の最低賃金、最低賃金の確認方法ならびに最低賃金の罰則について解説~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前回は、最低賃金の種類や最低賃金の対象となる賃金について解説しましたが、今回は最低賃金の減額特例や派遣労働者の最低賃金、最低賃金の確認方法、最低賃金の罰則などについて解説していきます。

 

▽最低賃金の関連コラムをチェックする
・最低賃金の種類と最低賃金の対象となる賃金の範囲について
・各都道府県における最新の最低賃金について
・試用期間中の者にも最低賃金が適用されるか

 

1.最低賃金の減額特例

最低賃金法は、原則として、事業場で働くすべての労働者と労働者を1人でも雇用するすべての使用者に適用されます。この場合の「労働者」とは、常用労働者のほか、臨時雇用労働者、パートタイム労働者、高校生・学生アルバイトや高年齢労働者など、雇用形態を問わず、賃金の支払いを受けるすべての者をいいます。このため、日本国内の企業に雇用される外国人労働者(入管法上の不法就労者を含む。)にも適用される点に留意が必要です。

ただし、一般の労働者と労働能力などが異なるのに最低賃金を一律にすると、かえって雇用機会を奪うことになってしまう場合もあるため、以下の労働者については、都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

【都道府県労働局長の許可のもとに最低賃金の対象から除外できる者】

精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
試の使用期間中の者
基礎的な技能および知識を習得させるための職業訓練を受ける者
軽易な業務に従事する者
断続的労働に従事する者

 

なお、減額の特例許可申請は、所定の様式により労働基準監督署を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。この場合の許可の判断にあたっては、「業務内容」、「対象となる者の労働能率等」、「労働時間」、「支払おうとする賃金額」が考慮されることとされています。

 

2.派遣労働者の最低賃金

派遣労働者の最低賃金は、派遣元の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されます。

【派遣元と派遣先で地域が異なる場合】

【派遣先に特定(産業別)最低賃金が適用される場合】

3.最低賃金額以上かどうかの確認方法

支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを確認するにあたっては、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。

【各賃金形態における最低賃金額以上かどうかの確認方法】

時間給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

日給制の場合

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)

月給制の場合

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

上記①~④の組み合わせの場合

たとえば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記②、③の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

 

 

4.最低賃金の効力と罰則

最低賃金法では、最低賃金額より低い賃金で労働契約を締結した場合、その部分は無効となり、最低賃金が適用されることとされています(法4条2項)。

また、使用者が地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかったときは、最低賃金法違反として、50万円以下の罰金に処せられます(法40条)。一方、特定最低賃金については、最低賃金法の罰則はありませんが、労働基準法における賃金の全額払い違反として30万円以下の罰金が課されることとされています(労働基準法120条1号)。

さらに、最低賃金法では、事業場に最低賃金法またはこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合、労働者は、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長または労働基準監督官に申告して、是正のため適正な措置をとるように求めることができることとされています(法34条)。使用者は、申告したことを理由として、労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされています。この定めに反した場合には、罰則として6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が適用されます(法39条)。

5.最低賃金の周知義務

使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者の範囲およびこれらの労働者にかかる最低賃金額、算入しない賃金ならびに効力発生年月日を常時作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があるとされています(法8条)。

6.おわりに

今回は、最低賃金の減額特例、派遣労働者の最低賃金、最低賃金の確認方法、効力、罰則など最低賃金について見てきました。4.で見たように、最低賃金法違反には罰則が定められていますので、企業としては事業場に適用される最低賃金をしっかりと把握し、最低賃金額を下回ることがないよう注意することが必要です。

以上

 

次回コラム: 【2022年10月改定!事業所ごとの確認が必要です!】各都道府県における最新の最低賃金について ~地域別最低賃金の全国一覧と助成金の解説~

 

本コラム前編: 【基礎から解説!】最低賃金とはなにか?(前編)~ 最低賃金の種類と最低賃金の対象となる賃金の範囲について解説~

 

関連コラム: 【試用期間中の者にも最低賃金が適用されるか】

 

 

ヒューマンテック経営研究所
所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

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