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人事労務コラム Column

2023.09.15

法改正情報

【令和5年(2023年)度版】最低賃金額の改定(後編)~令和5年(2023年)度改定額~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2023年8月18日に、厚生労働省より令和5年(2023年)度の地域別最低賃金額の答申状況が公表されました。本年度の改定額の全国加重平均は1,004円となり、最低賃金法が制定されて以降、初めて1,000円を超えることとなりました。

最低賃金は、近年、大幅な引上げが続いていますが、これは2000年代半ばに最低賃金で働いた場合の手取り額が生活保護水準を下回る逆転現象、いわゆるワーキングプアの問題が社会問題化したことやここ数年の急激な物価高騰の影響が背景にあり、2008年7月の改正法施行以降、全国平均で300円以上引き上げられました。

前回コラムでは、最低賃金の目安制度のランク区分数の変更について解説しましたが、今回は各都道府県の令和5年(2023年)度改定額について見ていきたいと思います。

▽前回コラム
【令和5年(2023年)度版】最低賃金額の改定(前編)

 

1.引上げ額の目安と各都道府県の状況

中央最低賃金審議会から示された今年度の引上げ額の目安は、都道府県の経済実態に応じて区分されたランク別に、Aランクが41円、Bランクが40円、Cランクが39円とされました。この目安額を参考に各地方最低賃金審議会から各都道府県労働局長に対して答申がなされ、東京、神奈川、大阪、埼玉、千葉、愛知、京都、兵庫の8都府県では改定後の賃金額が1,000円を超えました。引上げ額は24道県で目安額を上回り、なかでも佐賀で8円、山形、鳥取、島根で7円、青森、長崎、熊本、大分で6円が目安額に上乗せされるなど、急激な物価高への対応や地域間の人材獲得競争の観点から、大幅な上乗せをする県が多数見られました。その結果、全国の加重平均額は昨年度から43円引上げられ1,004円となり、31円引上げられた昨年度を上回り、1978年度に目安制度が始まって以来、最高の引上げ額となりました。

答申された改定額は、関係労使からの異議申出に関する手続きを経て、10月1日より順次発効されます。

2.各都道府県の最低賃金

各都道府県の令和5年度地域別最低賃金額および発効年月日は下表のとおりです。

3.最低額と最高額の差

前述したとおり、地域別最低賃金は都道府県ごとに定められているため、従来から地域間格差が問題視されてきましたが、この比率は9年連続で縮小しており、都市部と地方における最低賃金の格差は徐々に縮小しています。

今年度の改正後の最高額と最低額の差は220円とまだ小さくはありませんが、前回コラムでも見たとおり、格差解消のために「目安制度ランク区分数」の変更がなされ、A~Dの4ランクから、A~Cの3ランクに変更されるとともに、地方では目安額より大幅な上乗せが見られたことから、最高額(東京)1,113円と最低額(岩手)893円の比率は80.2%となり、昨年の79.6%よりわずかながら格差が縮小しています。来年度以降も、さらに格差が縮小することが予想されます。

4.おわりに

地域別最低賃金は、今年度、政府が長らく目標として掲げてきた「全国加重平均1,000円以上」に到達しました。本年8月に行われた「新しい資本主義実現会議」では、岸田首相が「2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円まで引き上げる」と表明しており、来年度以降もさらなる引上げが予想されます。

地方では人手不足の状況下において他県への人材流出を防ぐため、今年度見られたような最低賃金目安額からの大幅な上乗せが、来年度以降も続く可能性があります。このような中、賃上げに堪えうる経営環境を維持していくためには、業務の効率化や働き方の見直しなど、生産性の向上に向けた取組みが必須となるため、生産性向上のための設備投資に取り組んだ中小企業を対象とする助成金などを有効に活用することも考えられます。

 

以上

 


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