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人事労務コラム Column

2024.03.15

法改正情報

【要注意!】時間外労働・休日労働の取扱いについての考え方

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

前回まで3回にわたり、時間外労働の上限規制が適用猶予されている事業・業務に関して2024年4月以降適用される規制内容について解説してきました。今回はその最終回として、時間外・休日労働の時間の計算に関する基本的な考え方や間違えやすいポイントなど、実務上の留意点について見ていきます。

▽前回コラム
【2024年4月改正施行!】時間外労働の上限規制 ~医業に従事する医師への適用~

 

1.時間外・休日労働とは

労働時間および休日については労働基準法に定めがあり、労働時間は週40時間、1日8時間を超えてはならず、休日は毎週少なくとも1日または4週を通じて4日以上与えることとされています。法律で定められたこれらの時間および休日をそれぞれ「法定労働時間」、「法定休日」といいます。

法定労働時間を超えまたは法定休日に労働させるためには、三六協定の締結が必要です。また、実際に協定の定めに基づいて時間外・休日労働をさせた場合には、時間外・休日労働にかかる割増賃金を支払う必要があります。さらには、22時から翌5時の深夜時間帯に労働させた場合には、深夜業にかかる割増賃金を支払わなければなりません。

2.三六協定における「時間外労働」および「休日労働」の時間

前述の三六協定では、時間外労働をさせることができる時間数および休日労働をさせることができる日数について定めることとなりますが、ここでいう「時間外労働」は法定労働時間を超えて労働させた時間を指します。このため、会社の就業規則等で定める所定労働時間を超えて労働させた時間であっても、法定労働時間内であれば三六協定における時間外労働の時間数には含まれません。また、休日労働についても、法定休日の労働のみが三六協定における休日労働に当たり、法定休日ではない休日(法定外休日)については、三六協定における休日労働の日数には含まれません。ただし、法定外休日は時間外労働となる場合がある点に留意が必要です。この点については後述します。

なお、所定休日のすべてを労働させた場合には、暦週の後順に位置する休日が法定休日となります。たとえば、暦週が日曜日から土曜日であって、日曜日および土曜日の両方に労働した場合には、当該暦週において後順に位置する土曜日における労働が法定休日労働に当たります(図表1参照)。ただし、法定休日を就業規則等で「日曜日」などと特定している場合には、その日の労働が法定休日労働となります。

【図表1】法定外休日労働と法定休日労働(法定休日を特定していない場合)

 

3.時間外・休日労働の計算例

以下、時間外・休日労働の計算例をケース別に見ていきましょう。

(1)ケース1:1日8時間を超えて法定外休日に労働させた場合

 

ケース1では、火曜日から木曜日まで所定外労働を行っていますが、火曜日は9時間労働させています。この9時間のうち1時間が1日8時間を超える労働となり、三六協定の対象となる時間外労働に該当します。一方、火曜日から木曜日までの8時間を超えない時間外労働は三六協定の対象とはなりません。また、休日については、日曜日に休んでいるため法定休日は日曜日となり、土曜日の労働については三六協定における休日労働とはなりませんが、土曜日に労働させた4時間は週40時間の法定労働時間を超える労働のため、三六協定の対象となる時間外労働に該当します。

(2)ケース2:法定休日に労働させた場合(法定休日を定めていない場合)

 

ケース2では、法定休日を定めておらず、所定休日の日曜日、土曜日いずれも労働させています。このような場合、2.で述べたとおり、暦週の後順に位置する土曜日が法定休日となります。したがって、土曜日に労働させた4時間は、三六協定の対象となる休日労働に当たります。また、日曜日に労働させたうちの5時間は週40時間を超える労働に当たるため、三六協定の対象となる時間外労働に該当します。

(3)ケース3:祝日に労働させた場合

 

ケース3では所定休日である祝日(水曜日)に労働させていますが、他の所定休日(日曜日、土曜日)に休んでいるため法定休日には当たりません。また、週の実働時間が週40時間を超えないため、三六協定の対象となる時間外労働とはなりません。

(4)ケース4:年休を取得して法定外休日に労働させた場合

 

ケース4は、水曜日が年休取得、土曜日の法定外休日に7.5時間労働させた場合です。年休取得日は実際に労働していないため、労働時間に計上する必要はありません。土曜日の労働時間を含めても実働時間が週40時間を超えないため、土曜日の労働は、三六協定の対象となる時間外労働には該当しません。

4.振替休日と時間外労働

時間外・休日労働の計算例について見てきましたが、その他の留意すべき点として、振替休日の取扱いがあります。振替休日とは、休日をあらかじめ他の労働日と振り替える制度をいいます。休日を振り替えた場合、休日と労働日が入れ替わるため、あらかじめ休日と定められていた日は労働日となり、その日に労働させても時間外労働や休日労働とはなりません。ただし、週をまたいで休日を振り替えた結果、週の労働時間が40時間を超える場合には、三六協定の対象となる時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります(図表2参照)。

【図表2】振替休日を翌週に振り替える場合

 

なお、振替休日と類似した制度に「代休」がありますが、代休は休日労働をさせた後、事後的に休日を与えるもので、代休を与えても休日労働の事実は消えません。このため、代休を取得させた場合でも、時間外労働または休日労働として割増賃金の支払いを免れることはできません。

5.おわりに

ここまで見てきたとおり、時間外・休日労働といっても、すべてが三六協定の対象となるわけではありません。三六協定の対象となるのは法定時間外労働および法定休日労働であり、割増賃金(×1.25または×1.35)の支払いが発生するのもこれらの時間外・休日労働に限られ、その他の残業、休日労働に対しては、割増のない通常の賃金の支払い(×1.00)で足ります。勤怠管理や給与計算においては、この考え方をしっかりと理解しておく必要があります。

以上

 


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