2026.08.01
法改正情報
【2026年10月改正】パートタイム・有期雇用労働法施行規則・雇用管理指針の概要 ~雇入れ時の労働条件明示事項の追加・雇用管理の改善等に関する措置の内容の変更について~
2026年10月1日よりパートタイム・有期雇用労働者に関するルールの一部が変更されます。今回の見直しは、同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことを踏まえ、「同一労働同一賃金ガイドライン」を含む関係省令および指針が改正されたことによるもので、①同一労働同一賃金ガイドラインの改正、②雇入れ時の労働条件明示事項の追加、③雇用管理の改善等に関する措置の内容の変更等が行われます。そこで今回は、②、③の改正内容について見ていきます(※1)。
(※1)①の同一労働同一賃金ガイドラインの改正概要については、「【2026年10月施行】同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(前編)、(後編)」を参照のこと。
▽同一労働同一賃金ガイドラインの改正概要コラムをチェックする▽
【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(前編)
【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(後編)
目次
1.パートタイム・有期雇用労働者に関するルール等について
改正内容について見る前に、まずは現行のパートタイム・有期雇用労働者に関するルール等について見ていきましょう。
(1)パートタイム・有期雇用労働者とは
パートタイム・有期雇用労働者とは、パートタイム・有期雇用労働法において、以下のように定義されています(図表1)。
【図表1 パートタイム・有期雇用労働者の定義】
| 区分 |
定義
|
| パートタイム労働者 |
1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者 (※2)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
|
| 有期雇用労働者 |
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者
|
(※2)いわゆる正規型の労働者および事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)。
パートタイマー、アルバイト、嘱託、契約社員、臨時社員、準社員などの名称にかかわらず、図表1の条件に該当した場合には、パートタイム・有期雇用労働法の対象となります。
(2)パートタイム・有期雇用労働者に関するルール
パートタイム・有期雇用労働法において、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールは、以下のように定められています(図表2参照)。
【図表2 主なパートタイム・有期雇用労働者に関するルール】(※3)
| (ⅰ)パートタイム・有期雇用労働者への労働条件の文書による明示・説明義務 |
| a)雇入れ時に、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口について、文書の交付等により明示しなければならない(第6条) |
| b)雇入れ時に、実施する雇用管理の改善に関する措置の内容(賃金制度、教育訓練、福利厚生施設の利用等)を説明しなければならない(第14条第1項) |
| c)パートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との待遇の相違の内容・理由・待遇の決定にあたって考慮した事項を説明しなければならない(第14条第2項) |
| d)パートタイム・有期雇用労働者が説明を求めたことを理由として、解雇等の不利益取扱いをしてはならない(第14条第3項) |
| e)パートタイム・有期雇用労働者からの相談に対応するための体制(相談窓口等)を整備しなければならない(第16条) |
|
(ⅱ)均等・均衡待遇の確保の推進 |
| <すべてのパートタイム・有期雇用労働者> |
| a)基本給・賞与その他のすべての待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間に、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲(人材活用のしくみや運用など)、③その他の事情のうち、待遇の性質・目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない(第8条) |
| <通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者(※4)> |
| b)通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者については、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として、基本給・賞与その他のすべての待遇について、差別的取扱いをしてはならない(第9条) |
| <通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者以外のすべてパートタイム・有期雇用労働者> |
| c)通常の労働者との均衡を考慮しつつ、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を勘案してその賃金・教育訓練を決定・実施するように努めるものとする(第10条、第11条第2項) |
| d)通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては職務内容が同じパートタイム・有期雇用労働者に対しても実施しなければならない(第11条第1項) |
| e)福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については、パートタイム・有期雇用労働者に対しても利用の機会を与えなればならない(第12条) |
|
(ⅲ) 通常の労働者への転換の推進 |
| 通常の労働者への転換を推進するため、通常の労働者の募集を行う場合のパートタイム・有期雇用労働者への周知、新たに通常の労働者を配置する場合の応募の機会の付与、通常の労働者への転換のための試験制度等のうち、いずれかの措置を講じなければならない(第13条) |
|
(ⅳ) 就業規則の作成の手続き |
| パートタイム・有期雇用労働者にかかる事項について就業規則を作成し、または変更しようとするときは、パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くように努めるものとする(第7条) |
(※3)傍線部は今回改正される事項。
(※4)通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者とは、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組みや運用など)が通常の労働者と同じパートタイム有期雇用労働者をいう。
2.改正概要
それでは、改正内容について見ていきましょう。
(1)パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正
現行法では、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたとき、または労働契約を更新したときは、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口について文書の交付等による明示が必要です(図表2(ⅰ)a)参照)。
今回の省令の改正により、パート・有期雇用労働法第14条第2項の説明義務(図表2(ⅰ)c)参照)について労働条件通知書に記載することが義務づけられ、明示事項として「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を記載することが追加されました。
なお、パートタイム・有期雇用労働法で定める労働条件明示事項について違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。
(2)雇用管理指針の改正
雇用管理指針(※5)の改正により、事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置の内容について、以下の事項が変更されました。
(※5)正式名称は「事業主が講ずべき事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理 の改善等に関する措置等についての指針」。
① パートタイム・有期雇用労働者にも適用がある法令の追加
指針では、事業主に対し、労働基準法、労働安全衛生法、育児・介護休業法等の労働に関する法令が、パートタイム・有期雇用労働者にも適用されることを認識し、これらを遵守しなければならないとされていますが、今回の改正により、その例示として、新たに職業能力開発促進法が追加されました。
② 賃金決定時の留意事項の追加
パートタイム・有期雇用労働者の賃金を決定する際の留意事項として、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、昇給に反映するなど、公正な評価に基づいて賃金を決定することが望ましい旨が新たに追加されました。雇用管理指針では、具体例として、パートタイム・有期雇用労働者と通常の労働者との間で共通する職務等に応じて、共通の賃金制度や評価項目を設けることが例示されています。
③ パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件および配慮事項の追加
パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者について、以下の内容が新たに追加され、要件が明確になりました(図表3参照)。
【図表3 パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件・配慮事項】
| (ⅰ)パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件 |
| パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する者とする。 |
| a)管理監督者(労働基準法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者)でないこと |
| b)パートタイム・有期雇用労働法第7条第1項の規定により意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であって、事業主の意向に基づき選出されたものでないこと |
| (ⅱ)事務遂行のための必要な配慮 |
| パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者が事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮(事務スペースや事務機器の提供等)をしなければならない。 |
④ 福利厚生施設の利用に関する便宜の措置の追加
パートタイム・有期雇用労働法第12条および省令により、通常の労働者に対して利用の機会を与えている給食施設、休憩室、更衣室の3施設については、パートタイム・有期雇用労働者に対しても利用の機会を与えることが義務づけられています(図表2(ⅱ)e)参照)。今回の雇用管理指針の改正では、利用の機会を与えることが義務づけられている3施設以外の一定の福利厚生施設(物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設、駐車場等)の利用に関して、パートタイム・有期雇用労働者に対して、便宜の供与の措置を講ずるように配慮しなければならないこととされました。
「配慮」とは、何らかの具体的な措置を講ずることであり、必ずしも通常の労働者と同様の取扱いが求められるものではありませんが、特段の事情なく福利厚生施設の利用を通常の労働者に限っているなどの場合には、取扱いを見直す等の具体的な措置を講ずることが必要である旨が示されています。
⑤ 通常の労働者への転換推進措置を講ずる際の留意点の追加
パートタイム・有期雇用労働法第13条に定める通常の労働者への転換推進措置を実施する際の留意点について、以下の内容が追加されました(図表4参照)。
【図表4 通常の労働者への転換推進措置を講ずる際の留意点】
| ・通常の労働者への転換のための制度を設けるとともに複数の措置を講ずることが望ましい。 |
| ・労働契約の更新の際の面談等の機会を利用し、または電子メール等を活用すること等により、通常の労働者への転換推進措置の対象となるパートタイム・有期雇用労働者の意向を確認し、その意向に配慮しなければならない。 |
⑥ 待遇差の説明についての留意点の追加
パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項により、事業主はその雇用するパートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との待遇の相違の内容および理由と待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明しなければならないことが義務づけられています(図表2(ⅰ)c)参照)。この待遇差の説明について、以下の留意点が追加されました(図表5参照)。
【図表5 待遇差についての留意点】
| (ⅰ)説明の方法 |
| a)「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによって説明する。 |
| b)「資料を活用し、口頭により説明する方法」による場合には、説明に活用した資料その他の関連資料を交付することが望ましい。 |
| c)労働者の個人情報等の漏えいを防止する等の観点から資料を交付することが困難な場合であっても、パートタイム・有期雇用労働者から事後に求めがあったときは当該資料を閲覧させる等の工夫をするように努める。 |
| (ⅱ)説明の求めがない場合における周知等 |
| パートタイム・有期雇用労働者から説明の求めがない場合であっても、労働契約の更新時等に、通常の労働者との間の待遇差の内容および理由に関する分かりやすい資料を交付することや、待遇の相違の内容および理由について説明を求めることができることを周知すること等が望ましい。 |
⑦ パートタイム・有期雇用労働者の意見を反映させるための方法等の追加
雇用管理指針において、事業主が雇用管理の改善等に関する措置等を講ずる際は、パートタイム・有期雇用労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するよう努める旨が示されていますが、改正後は、その方法として、「パートタイム・有期雇用労働者との話し合いの機会を設けること」、「アンケートを実施すること」等の具体例が新たに追加されました。
⑧ 雇用管理の改善等に関する情報公表等の追加
事業主は、通常の労働者への転換のための制度の内容とその実績および職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練等に関する取組状況に関する情報をパートタイム・有期雇用労働者に明示するよう努めるとともに、公的機関のウェブサイトまたは自社のウェブサイトへの掲載その他の適切な方法により定期的に公表することが望ましい旨が追加されました。
3.おわりに
今回は2026年10月1日より変更になるパートタイム・有期雇用労働者に関するルールのうち、雇入れ時の労働条件明示事項の追加および雇用管理の改善等に関する措置の内容の変更について見てきました。施行日に向けて、自社のパートタイム・有期雇用労働者の労働条件通知書の様式変更や、雇用管理指針に追加された福利厚生施設の利用に関する便宜の措置、待遇差に関する説明等について適切に実施できるよう、準備を進めていくことが重要です。
以上
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