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人事労務コラム Column

2026.09.01

法改正情報

【法改正対応!】2026年10月施行 主な法改正事項のまとめ(後編) ~ パートタイム・有期雇用労働法、健康保険法・厚生年金保険法 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

近年、労働関係諸法令は頻繁に改正されていますが、これらの改正には社内諸制度の見直しや諸規程の改定などの対応が必要となるものも少なくありません。今回は、前回のコラムに引き続き2026年(令和8年)10月に施行される主な改正事項について解説します。

▽前回コラムをチェックする▽
【法改正対応!】2026年10月施行 主な法改正事項のまとめ(前編)
~ 労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法 ~

 

1.2026年10月施行の主な改正事項

2026年10月施行の主な改正事項は図表1のとおりです。今回は、これらの改正のうち、パートタイム・有期雇用労働法および健康保険法・厚生年金保険法の改正について解説します。

【図表1 2026年10月施行の主な改正事項】下線がついている項目は関連コラムにリンクしています。

法律 改正項目
労働施策総合推進法 カスタマーハラスメント対策の義務化(※1)
男女雇用機会均等法 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化(※1)
女性活躍推進法 「プラチナえるぼし」認定基準の改正(※1)
パートタイム・有期雇用労働法 「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正
「雇用管理指針」の改正
労働条件明示事項に新たな明示事項を追加
健康保険法・厚生年金保険法 短時間労働者の賃金要件撤廃(予定)

※1の改正内容は、前回コラムを参照のこと。

 

2.改正法の概要

それでは、各改正のポイントについて見ていきましょう。

(1)「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正(パートタイム・有期雇用労働法)

パートタイム・有期雇用労働法では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間に不合理な待遇差を設けてはならないこととされています(パ有法第8条)。「同一労働同一賃金ガイドライン」(※2)(以下「ガイドライン」という。)は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間に待遇差が存在する場合に、どのような差が不合理なものであり、どのような差が不合理なものでないのか、各種待遇ごとに原則となる考え方および具体例が示されたものです。今回の改正で見直された主な事項は次のとおりです。
※2 正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」

① 裁判例を踏まえた記載の見直し

近年の最高裁判決を踏まえて、現行のガイドラインにおける待遇に関する記載が見直されるとともに、新たな待遇に関する記載が追加されました。主な内容は次のとおりです(図表2)。

【図表2 改記載が見直された待遇の一覧】

待  遇 見直し・追加された内容(要約)
 賞与(記載の追加)
退職手当(新規追加)
・賞与・退職手当の性質およびその目的には、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上等さまざまなものが含まれうる。
・賞与・退職手当の性質および目的が非正規雇用労働者にもあてはまるにもかかわらず、非正規雇用労働者に対し、正規雇用労働者との違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められるものに当たりうる。
 無事故手当(新規追加)
 正規雇用労働者と業務の内容が同一の非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の無事故手当を支給しなければならない。
 家族手当(新規追加)
 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の家族手当を支給しなければならない。
 住宅手当(新規追加)
 住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合には、正規雇用労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない。
 福利厚生施設(記載の追加)
 福利厚生施設の利用料金・割引率等の利用条件について不合理な待遇差を設けてはならない。
 病気休職(記載の追加)
 正規雇用労働者に病気休職(療養の専念を目的として付与する病気休暇を含む。)期間にかかる給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、正規雇用労働者と同一の給与の保障を行わなければならない。
 夏季冬季休暇(新規追加)
 非正規雇用労働者にも、正規雇用労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。
 褒賞(新規追加)
 一定の期間勤続した労働者に付与する褒賞について、正規雇用労働者と同一の期間勤続した非正規雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の褒賞を付与しなければならない。

 

② 正規雇用労働者の待遇引下げによる待遇差解消にかかる記載趣旨の明確化

事業主が正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇差の解消に取り組むにあたっては、正規雇用労働者の労働条件を不利益に変更することなく、非正規雇用労働者の労働条件の改善を図ることが求められるということが明確に記載されました。

③ パートタイム・有期雇用労働法第8条の「その他の事情」の明確化

パートタイム・有期雇用労働法第8条では、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲(人材活用のしくみや運用など)、③その他の事情のうち、当該待遇の性質および目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けてはならないとする「均衡待遇」の原則が定められています。
この考慮すべき事情のうちの「その他の事情」について、行政通達に示されている具体例(職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行、労使交渉の経緯や結果等の諸事情)がガイドラインにも記載されました。
また、非正規雇用労働者から求めがあった場合に待遇の相違の内容および理由について事業主が十分な説明を行わなかったと認められる場合や、非正規雇用労働者の意向を十分に考慮せず一方的に待遇を決定した場合には、その事実も「その他の事情」に含まれ、待遇の相違が不合理と認められることを基礎づける事情として考慮されうる旨が明確化されました。

④ いわゆる「正社員人材確保論」についての追記

「正社員人材確保論」とは、正規雇用労働者としての職務を遂行しうる人材の確保およびその定着を図る等の目的で、非正規雇用労働者より正規雇用労働者を優遇することに合理性があるとする考え方です。この考え方はこれまでいくつかの最高裁判決で示されてきたものですが、今回のガイドラインの改正により、この「正社員人材確保論」のみをもって直ちに正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差が不合理ではないと当然に認められるものではない旨が追記されました。

⑤ 無期雇用フルタイム労働者等へのガイドラインの趣旨の波及

無期雇用フルタイム労働者は、パートタイム・有期雇用労働法に規定する短時間・有期雇用労働者に該当しないことから、基本的には「均衡待遇」の考え方や同一労働同一賃金ガイドラインは適用されません。しかし、今回の改正では、この無期雇用フルタイム労働者の労働契約について、労働契約法第3条第2項の規定により、労働契約は就業実態に応じて均衡を考慮しつつ締結・変更されるべきものであること、その均衡の考慮にあたっては、ガイドラインの趣旨が考慮されるべきであること等が留意点として追加されました。

関連コラム:
【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(前編)
【2026年10月施行】改正同一労働同一賃金ガイドラインを分かりやすく解説!(後編)

 

(2)「雇用管理指針」の改正(パートタイム・有期雇用労働法)

非正規雇用労働者の待遇等に関し、事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する措置の内容について定めた「雇用管理指針」(※3)が改正され、以下の事項が追加されました。

① 非正規雇用労働者に適用がある法令の追加

雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるにあたって、非正規雇用労働者に適用されることを認識し、遵守しなければならない法令として、「職業能力開発促進法」を追加。

② 賃金決定時の留意事項

非正規雇用労働者の賃金を決定する際は、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、昇給に反映するなど、公正な評価に基づいて賃金を決定することが望ましいこと。

③ 賃金決定時の留意事項

a)過半数代表者は以下のいずれにも該当する者であること。

・労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でない者
・意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票・挙手等の方法により選出された者であって、事業主の意向に基づき選出されたものでないこと

b)過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならないこと。
c)過半数代表者が意見聴取に関する事務を円滑に遂行することができるよう配慮しなければならないこと。

④ 福利厚生施設の利用に関する便宜の措置の追加

物品販売所、病院、診療所、浴場等の福利厚生施設の利用に関して、便宜の供与の措置を講ずるように配慮しなければならないこと。

⑤ 正規雇用労働者への転換推進措置(パ有法第13条)を講ずる際の留意点

正規雇用労働者への転換制度を設けるとともに、複数の転換推進措置を講ずることが望ましいこと。また、非正規雇用労働者の転換の意向を確認し、その意向に配慮しなければならないこと。

⑥ 非正規雇用労働者から求めがあった場合の待遇差の説明(パ有法第14条2項)についての留意点

a)「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによって説明すること。
b)説明の求めがない場合でも、労働契約の更新の際等に、待遇の相違の内容等について容易に理解できる内容の資料を交付することや、待遇の相違の内容等について説明を求めることができることを周知することが望ましいこと。

⑦ 非正規雇用労働者の意見を反映させるための方法等の例示

雇用管理の改善等に関する措置等を講ずる際の意見を聴く方法には、話し合いの機会を設けたりアンケートを実施したりすることなどがあること。

⑧ 雇用管理の改善等に関する情報公表等の追加

正規雇用労働者への転換制度の内容や転換の実績等の情報を非正規雇用労働者に明示するよう努めるとともに、自社のウェブサイト等に定期的に公表することが望ましいこと。

※3 正式名称は「事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」

 

関連コラム:
【2026年10月改正】パートタイム・有期雇用労働法施行規則・雇用管理指針の概要 ~雇入れ時の労働条件明示事項の追加・雇用管理の改善等に関する措置の内容の変更について~

 

(3)労働条件明示事項の追加(パートタイム・有期雇用労働法)

現行のパートタイム・有期雇用労働法では、事業主はパートタイム・有期雇用労働者の雇入れ時に、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口について、文書の交付等により明示しなければならないとされています。この明示事項について、パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正により、新たな明示事項として「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を文書の交付等により明示することが義務づけられました。

また、説明にあたっては(2)⑥のとおり、雇用管理指針において、「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによって説明することとされていることに留意が必要です。

関連コラム:
【2026年10月改正】パートタイム・有期雇用労働法施行規則・雇用管理指針の概要 ~雇入れ時の労働条件明示事項の追加・雇用管理の改善等に関する措置の内容の変更について~ について~

 

(4)短時間労働者の賃金要件撤廃(健康保険法・厚生年金保険法)

短時間労働者の健康保険・厚生年金保険加入要件のうち、賃金要件すなわち「所定内賃金が月額8.8万円以上であること」について、2026年10月以降、撤廃が予定されています(※4)。これは、2025年度にすべての都道府県で地域別最低賃金が時給1,016円を超えたため、週の所定労働時間が20時間以上の労働者の所定内賃金は原則として8.8万円以上となることによる改正です。
ただし、最低賃金法では、断続的労働への従事など一定の場合に最低賃金の減額を許可する特例があり、特例の対象となる短時間労働者のうち、月額が8.8万円未満の者は、原則として健康保険・厚生年金保険の加入の対象外とされています。

※4 本稿執筆時点では改正法の施行期日を定める政令が制定されていませんが、日本年金機構のHPにおいて「令和8年10月に撤廃予定」とされています。

 

関連コラム:
【2025年6月成立】年金制度が改正されます!! ~ 社会保険の適用拡大など ~

 

3.おわりに

前回から2回にわたって、2026年10月1日施行の法改正について見てきました。前述のとおり、パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正により、2026年10月以降、労働条件を明示する際は、労働条件通知書等に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を記載しておくことが必要です。この記載により、パートタイム・有期雇用労働者から待遇の相違の内容の説明を求められる機会が増えることが想定されるため、今回の改正を機に、あらためて自社の制度について点検し、不合理な待遇差をなくす取組みを進めるとともに、不合理ではない待遇差については、その理由を説明できるよう、説明資料等を作成しておくことが重要です。

以上

 


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