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人事労務コラム Column

2026.08.15

法改正情報

【法改正対応!】2026年10月施行 主な法改正事項のまとめ(前編) ~ 労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法 ~

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

近年、労働関係諸法令は頻繁に改正されていますが、これらの改正には社内諸制度の見直しや諸規程の改定などの対応が必要となるものも少なくありません。2026年(令和8年)10月1日には、企業の人事・労務管理の実務に影響を及ぼす法令改正が数多く施行・適用されます。そこで、今回と次回の2回に分けてこれらの改正事項について解説します。

▽後編コラムをチェックする▽
【法改正対応!】2026年10月施行 主な法改正事項のまとめ(後編)
~パートタイム・有期雇用労働法、健康保険法・厚生年金保険法~

 

1.2026年10月施行の主な改正事項

2026年10月施行の主な改正事項は図表のとおりです。今回は、これらの改正のうち、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法の改正について解説します。

【図表 2026年10月施行の主な改正事項】下線がついている項目は関連コラムにリンクしています。

法律 改正項目
労働施策総合推進法 カスタマーハラスメント対策の義務化(※1)
男女雇用機会均等法 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化(※1)
女性活躍推進法 「プラチナえるぼし」認定基準の改正(※1)
パートタイム・有期雇用労働法 「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正
「雇用管理指針」の改正
労働条件明示事項に新たな明示事項を追加
健康保険法・厚生年金保険法 短時間労働者の賃金要件撤廃(予定)

 

2.改正法の概要

それでは、各改正のポイントについて見ていきましょう。

(1)カスタマーハラスメント対策の義務化(労働施策総合推進法)

「職場におけるカスタマーハラスメント」(以下「カスハラ」という。)を防止するため、事業主には、雇用管理上必要な措置を講じることが義務づけられます。カスハラの定義は以下のとおりです。

職場において行われる
顧客等の言動であって、
その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすもの

 

「雇用管理上必要な措置」の具体的な内容は以下の①~⑤のとおりです。

① 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

事業主は、カスハラに関する方針を明確化するとともに、その方針を労働者に周知・啓発するため、次のa)およびb)の措置を講じる必要があります。

a) カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
   (社内報、パンフレット、社内ホームページ等への掲載・配布、研修、講習等の実施等)
b) カスハラの内容およびあらかじめ定めた対処の内容について管理監督者を含む労働者に周知すること
   (職場におけるカスハラへの対処の内容を規程に定める、顧客等への対応に関するマニュアル等にカスハラへの対処の内容を記載する、研修・講習等を実施する等)

 

② 相談体制の整備

事業主は、労働者からの相談に適切に対応するため、あらかじめ相談窓口を設置し、労働者に周知する必要があります。また、相談窓口を設けるにあたっては、相談窓口担当者に対する研修の実施や、マニュアルの整備などを通じて、相談に適切に対応できる体制を整備しておくことが求められます。

③ 事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、労働者からカスハラにかかる相談の申出があった場合には、その事案にかかる事実関係の迅速かつ正確な確認および適正な対処として、次のa)からc)までの措置を講じる必要があります。

a) 事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認すること
   (相談窓口の担当者等が、相談者から事実関係を確認することや、必要に応じて周囲の労働者からも事実関係を聴取したり、録音・録画などの客観的な証拠を確認すること等)
b) カスハラが生じた事実が確認できた場合、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
   (管理監督者等が被害者に代わって対応することや、被害者と行為者を引き離すための配置転換を行うこと、被害者に対するメンタルケアを実施すること等)
c) カスハラに関する方針をあらためて周知・啓発し、再発防止に向けた措置を講じること
   (カスハラに関する方針を社内報、パンフレット、社内ホームページ等にあらためて掲載・配布等することや、方針および対処の内容について周知・啓発するための研修、講習等をあらためて実施すること等)

 

④ 対応の実効性を確保するために必要なカスハラの抑止のための措置

事業主は、カスハラ抑止のための措置として、過度な要求を繰り返すなど、とくに悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、対処を行うことができる体制を整備する必要があります。対処の例として「カスハラ防止指針」(※1)では、暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る行動について警察へ通報することや、行為者に対して警告文を発出すること、店舗および施設等への出入りを禁止することなどが挙げられています。

※1 正式名称は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
 
⑤ ①から④までの措置とあわせて講ずべき措置
事業主は、上記①から④までの措置とあわせて、次のa)およびb)の措置を講じる必要があります。
 

a) 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること
b) 相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

▽関連コラムをチェックする▽
・カスハラ防止措置の法制化と企業の対応事項(前編)~これまでのカスハラ防止の動き~
・カスハラ防止措置の法制化と企業の対応事項(後編)~改正法の内容および企業の対応実務~
・【2026年10月義務化】カスハラ対策・求職者等セクハラ対策のポイント ~カスハラ対策編~

(2)求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化(男女雇用機会均等法)

「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」(以下「求職者等セクハラ」という。)を防止するため、事業主には、雇用管理上必要な措置を講じることが義務づけられます。

求職者等セクハラとは、「事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等による求職活動等が阻害されるもの」をいいます。事業主が講じるべき「雇用管理上必要な措置」の具体的な内容は、以下の①~④のとおりです。

① 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

事業主は、求職者等セクハラに関する方針を明確にするとともに、その方針を労働者および求職者等に周知・啓発するため、次のa)からc)までの措置を講じる必要があります。

a) 求職者等セクハラの内容および求職者等セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
   (就業規則等への規定、社内報、パンフレットへの掲載・配布等)
b) 求職者等セクハラにかかる性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
   (就業規則等において求職者等セクハラ行為者に対する懲戒規定を定め、内容を周知・啓発する等)
c) 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者および求職者等に周知・啓発すること
   (〔労働者に対して〕面談時間および場所の指定、やり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。〔求職者等に対して〕面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること等)

 

② 相談体制の整備

事業主は、求職者等からの相談に適切に対応するため、あらかじめ相談窓口を設置し、求職者等に周知する必要があります。また、相談窓口を設けるにあたっては、相談窓口担当者に対する研修の実施やマニュアルの整備などを通じて、相談に適切に対応できる体制を整備しておくことが求められます。

なお、「求職者等セクハラ防止指針」(※2)では、求職者等は人事担当者への相談をためらうことも想定されることから、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられるとされています。

 

※2

 正式名称は「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

 

③ 事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、求職者等から求職者等セクハラにかかる相談の申出があった場合には、その事案にかかる事実関係の迅速かつ正確な確認および適正な対処として、次のa)からd)までの措置を講じる必要があります。

a) 事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認すること
   (相談窓口の担当者等が相談者および行為者とされる者の双方から事実確認をすること、事実確認が十分にできない場合は第三者からも事実関係を聴取すること等)
b) 求職者等セクハラが生じた事実が確認できた場合、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
   (被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、人事担当者による被害者への相談対応等)
c) 求職者等セクハラが生じた事実が確認できた場合、行為者に対する措置を適正に行うこと
   (行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること等)
d) 求職者等セクハラに関する方針をあらためて周知・啓発し、再発防止に向けた措置を講じること
   (求職者等セクハラに関する方針を社内報、パンフレット、社内ホームページ等にあらためて掲載・配布等することや、労働者に対して求職者等セクハラに関する意識を啓発するための研修、講習等をあらためて実施すること)

 

④ ①から③までの措置とあわせて講ずべき措置

事業主は、上記①から③までの措置とあわせて、次のa)およびb)の措置を講じる必要があります。

a) 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること
b) 事実関係の確認等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

▽関連コラムをチェックする▽
・【2025年6月成立】就活ハラスメント防止措置の法制化と企業の対応実務
・【2026年10月義務化】カスハラ対策・求職者等セクハラ対策のポイント ~求職者等セクハラ対策編~

(3)「プラチナえるぼし」認定基準の改正(女性活躍推進法)

「えるぼし認定」とは、女性活躍推進法に基づき一般事業主行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。さらに、えるぼし認定を受けた事業主のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取組みの実施状況がとくに優良であるなど、一定の要件を満たした場合には「プラチナえるぼし」の認定を受けることができます。

このプラチナえるぼしの認定基準について、(2)の求職者等セクハラへの対策が義務化されることに伴い、事業主が講じた防止措置の内容を厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していることが追加されました。

なお、すでに「プラチナえるぼし」の認定を受けている企業についても、2026年10月1日からおおむね3ヵ月以内に、事業主が講じた求職者等セクハラ防止措置の内容を公表する必要があります。

▽関連コラムをチェックする▽
・【2026年4月施行】「えるぼし」認定基準の改正、プラス認定の創設
~改正女性活躍推進法省令・指針の概要~

 

3.おわりに

カスハラおよび求職者等セクハラへの対応にあたっては、相談窓口の設置のほか、規程やマニュアルの整備求職者等への対応に関するルールの策定および周知等が必要となります。このため、改正法の施行までに、準備すべき事項を整理し、新たに義務づけられる措置に適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。

次回は、パートタイム・有期雇用労働法、健康保険法・厚生年金保険法の改正事項について見ていきます。

以上

 


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