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人事労務コラム Column

2026.09.15

法改正情報

【2026年10月以降改定!】2026年度 地域別最低賃金について

ヒューマンテック経営研究所 所長 藤原伸吾(特定社会保険労務士)

2026年9月3日に厚生労働省より2026年度の地域別最低賃金額の答申状況が公表されました。今年度の改定額の全国加重平均は1,177円で昨年度からの上昇額は56円となり、目安制度が始まって以降最も高い上昇額となった昨年度に次ぐ2番目に高い引上げ額となりました。

今回は先日発表された各都道府県の2026年度最低賃金の改定額について見ていきたいと思います。

1.引上げ目安額と各都道府県の状況

① 引上げ目安額

各都道府県の引上げ目安額は、毎年度、中央最低賃金審議会から各都道府県の経済実態に応じて区分されたA~Cのランクごとに示されます。

目安額は従来、都市部のAランクが高くなる傾向にありましたが、近年は地域間格差への配慮から、下位ランクの目安額をより大きく引き上げる動きがみられます。2024年度は引上げの目安額がAランクからCランクまですべて同額となり、2025年度には初めて下位ランクの目安額が上位ランクの目安額を上回りました。

今年度の目安額は、物価の上昇が鈍化していることや、依然として賃上げ原資の確保が難しい企業も存在することを考慮した結果、全国加重平均の引上げ額は過去最高となった昨年度を下回り、55円とされました(昨年度は63円)。ランクごとの目安額は、小規模事業者における賃金上昇率がAランクよりもB・Cランクで高く、雇用情勢もB・Cランクが相対的に良い状況にあることなどを考慮してAランクが54円、Bランク、Cランクが56円となり、昨年度に引き続き下位ランクが上位ランクを上回りました。

② 各都道府県における最低賃金の答申状況

最低賃金の目安制度においては、中央最低賃金審議会で示された目安額を参考に各地方最低賃金審議会で審議が行われ、各都道府県労働局長に対して改定額の答申がなされます。

昨年度は11県が目安額に10円以上、上乗せするなど目安額を大幅に上回る答申がなされ、近隣県等の過度な競争や最下位回避の意識により地域の実態と乖離した引上げとなったのではという疑義がメディア等から呈されました。また、大幅な引上げを行った県では、使用者側の準備期間に配慮して発効日を「法定発効(公示の日から起算して30日を経過した日)」よりも後ろ倒しにする「指定日発効」とする傾向が見られ、結果として地域間の発効日に大きなばらつきが生じ、一時的に地域間格差が拡大するほか、年度ごとに発効時期が大幅に変動することで、労使双方の予見可能性が損なわれるおそれがあるという課題が生じました。

こうした状況を踏まえ、中央最低賃金審議会は、近隣県等との比較や最下位を避けたいという動機による目安額への大幅な上乗せや、指定日発効をけん制する趣旨の対応方針をとりまとめ、「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」として2026年6月に公表しました。また、政治の動向では、政府の「骨太方針2025」において「2020年代に全国平均1,500円」と目標を掲げていたのに対し、2026年7月に閣議決定された「日本成長戦略」および「骨太方針2026」では、最低賃金全国平均1,500円の達成時期を「遅くとも2030年代前半できる限り早期」に達成することとされ、目標の達成時期が後退するなど、最低賃金引上げの圧力は昨年度より弱まっています。

こうした動向を背景として、今年度は33府県で目安額を上回る引上げが行われた一方で、10円以上の大幅な上乗せはなく、昨年度よりも縮小傾向が見られました。

47都道府県の昨年度からの引上げ額は54円~65円であり、最も引上げ額が大きかったのは佐賀県で65円、続いて鹿児島県で64円、高知県、沖縄県で63円でした。また、これまで最低賃金額が1,200円を超えていたのは東京都、神奈川県のみでしたが、今年度は大阪府の最低賃金が1,231円に改定され、初めて1,200円を超えました。

発効日について、昨年度は10月1日から翌年3月31日までの幅がありましたが、本年は中央最低賃金審議会の方針もあり、37都道府県で通例の10月中の発効が決定されました。また、発効が最も遅い沖縄県でも12月2日には発効とされており、今年度は昨年度ほど大きなばらつきは生じませんでした。なお、答申された改定額は、関係労使からの異議申出に関する手続きを経たうえで、都道府県労働局長の決定により発効されます。

2.各都道府県の最低賃金

各都道府県の2026年度地域別最低賃金額および発効年月日は図表1のとおりです。

【図表1 各都道府県の2026年度地域別最低賃金額および発効年月日】

 

3.最低額と最高額の差

地域別最低賃金については、政府の「日本成長戦略」および「骨太方針2026」にも「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る。」という方針が盛り込まれていますが、地域間格差は、今年度において12年連続で縮小しており、都市部と地方における最低賃金の格差は徐々に縮小しています。

図表2のとおり、今年度の答申の最高額と最低額の差は195円と依然として小さくはありませんが、最高額(東京都)1,280円と最低額(宮崎県)1,085円の比率は84.8%となり、昨年度の83.4%から改善しており、政府も地域間格差の是正を方針として掲げていることから、来年度以降もさらなる縮小が予想されます。

【図表2 地域別最低賃金の最低額と最高額の推移】


 

4.おわりに

今年度の最低賃金は、引上げの勢いは多少鈍化しましたが、政府の目標にも掲げられていることから、来年度以降も引上げ自体は続くことが予想されます。

このような状況の中、最低賃金の上昇に対応する方策として、生産性の向上に取り組むことが企業に一層強く求められていくことが考えられます。なお、厚生労働省および中小企業庁では、賃上げを後押しする各種助成金が整備されていますので、こうした支援施策を活用することも視野に入れるとよいでしょう。

以上

 


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